火星の砂 - アーサー・C・クラーク

2008年07月22日 火曜日

最近は海外SF小説家の大御所の循環になって来ているが、アーサー・C・クラークの「火星の砂(SANDS OF MARS)」を読む。

初の地球~火星定期航路の開設により火星に取材旅行に行くSF作家という、何だかにんまりする設定の話なのだが、これがクラークを表すような、硬い、真面目なSF。
前半の火星までの航路は海外TVドキュメンタリーを見ている様な、今でも冷める事の無い擬似旅行記。
そこまで硬いSFなのに、火星につくと楽観的というか、人間に好意的過ぎるファンタジー的な話になってしまうのがどうも…。
その設定だと、植物学、鉱物学、動物学等の専門家がじゃんじゃん押し寄せ、むしろ好転するのではと、今から見ると思えてしまう。
宇宙船に真空管や、カラーフィルム、白黒映像でギリギリ等、また火星の状況など、今の情報からするとやはり古いSFになってしまうが、まだ前宇宙開発時代、1950年代初頭頃に書かれた事を考えると、全体的には当時の情報からもたらされた想像は非常に科学的で素晴らしい。
それに加え、途中の会話で出てくる「現実が特に宇宙旅行SFに追いつき、追い越した時、小説の価値は無いのでは…」と言うやり取りをSF興隆期にすでにしていたり、「地球からの莫大な援助に対して、火星開発は大した見返りは無い」と言う、まさに現在の宇宙開発が抱えている現状を指摘し、それが後半の話の流れになっている所はクラークがSFを現実の流れの中のフィクションとして捉えてるのが良く分かり、向いている方に感心した。
しかもクラークは読後は、希望やら、前向きさでさわやかと来たもんだ。

これ、現在の情報に書き換え、連続TVドラマにしたら、地味で、真面目すぎるかもしれないが面白そうでは?

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