ラストヒットマン
2013年10月08日 火曜日クリストファー・ウェア・スメッツ監督・脚本、ジョー・マンテーニャ主演の2008年のカナダ映画「ラストヒットマン(The Last Hit Man)」。
娘と二人で暗殺者家業をこなすヒットマンだったが、ある時暗殺に失敗する。自分がガンに犯されて余命も後わずかという事を知るが、暗殺失敗の報復をかわし、娘を守ろうとする。
題材や設定はおもしろい感じはあるのに、哀しみや親子関係の描きの足りなさや、盛り上がるはずの場面でも盛り上がる事も無い展開の平板さのまま、しれっと終わってしまう。
自分の病気を娘に隠そうとする父親は分かる所だけれど、基本的に無感情で人殺しをする人間なので哀しみや辛さは見えては来ない。それにやたらと病気の進行が速く、話の都合の良さが見えてしまう。たぶん、暗殺失敗から日にちはそれ程経っておらず薬ももらっているのに、今にも死にかけで、急に銃も真面に撃てなくなる位の進行度。風邪にかかって病状が悪化してる訳じゃあないんだから、そんな速さはないだろう…と、ちょっと見ていても白けて来る。
娘は幼い時から父親の手伝いをしている風で、やたらと銃の腕前が凄いのに今まで実際に人殺しをした事がなかったとか、何か微妙な設定。この設定が「始めて人が死ぬのを見てしまい、もう足を洗う」か「徐々に暗殺者として目覚め始めて、父親の仕事を引き継ぐ」のどちらかの振りになっているのかと思っていたら、特にそんな事も描かれず、結局最後まで父親の仕事をどうするかは一切描かれず仕舞い。父親の仕事もどう思っているかとかもあんまり描かれないので、何を見せたいのか?
他の部分でも脚本は甘く、親子の仲間となる青年も都合良くやって来る。父親の失敗により送られた暗殺者の青年はほぼ素人だったので、当然長年の玄人暗殺者の父親にやり返されるという、送った仕掛け人の頭の悪さったらない。この青年も父親にやられたからって、すぐさま父親側に転向。金なのか、助けられたからなのかも十分に描かれていないので、何だか分からず。父親の方もこの青年を引き入れた決定的な理由も分からず。この関係が裏切りやどんでん返しになるなら分かるのに、物凄くそのままなので、ただ親子の中に彼を入れ込む為だけの強引さと、単に脚本の描きの足りなさがあるだけ。
最後も、盛り上がる銃撃戦かと思いきや「帰っちゃいました。」で腰砕け。「家の外に出れば狙われる。このまま家の中にいれば、出血多量で死んでしまう。」という究極の選択かと思いきや、「ただ黙って待ってたら、敵は帰っちゃいました。こっちは死んでしまいました。」という気の抜ける何もしなさ。最後のグダッとした感じで疲れてしまった。
主人公の父親暗殺者を演じるのはTVドラマ「クリミナル・マインド」のデヴィッド・ロッシ役でお馴染みジョー・マンテーニャ。なのに、この小品感、安く仕上げた感、役者の演技を活かす訳でも無い演出とか、テレビドラマ業界人の映画転向って扱いが悪い作品が多い。
この映画、地味。地味でも見せる部分があれば見れるのに、それも無く、物凄くサラッと流れてしまうだけ。死が近い暗殺者という一ネタを捻る事も無く、そのまま見せているだけなので、中身が物凄くスカスカしている感じを受けてしまう。方向性はそんなに駄目ではないとは思うけれど、おもしろくない。
☆★★★★