奥さまは魔女

2013年06月18日 火曜日

1960年代にヒットしたアメリカのTVドラマ「奥さまは魔女」を基にした2005年の映画「奥さまは魔女(Bewitched)」。
この映画、ちょっと変わっているのは単なるテレビドラマ版「奥さまは魔女」の映画化ではなく、「奥さまは魔女」のリメイク版ドラマで演じるのが本当の魔女だったという二重構造的な映画。
ニコール・キッドマンは人間界にやって来た本物の魔女。ウィル・フェレルは映画でコケてしまった落ち目の役者で、再起をかける次の手がドラマ「奥さまは魔女」のリメイクでダーリンを演じる事であり、その相手役のサマンサにニコール・キッドマンが偶然選ばれるという、メタフィクションなのか、並行世界モノなのか何なのかよく分からない不思議な設定。

おもしろい設定ではあるけれど、どうにも弾けたパロディコメディにはなっていない感じ。わたしはテレビドラマ版「奥さまは魔女」を見た事無いけれど、見た人は多分「作るなら、もっと真っ直ぐなリメイク映画にしろ!」と思うはず。それ位、中途半端な設定になってしまい、わざわざ「奥さまは魔女」を使って、この設定で映画化する必要があったのかと思えた。

何より、主役二人の配役が不味い。
前々からニコール・キッドマンは魔女顔だと思っていたけれど、実際に魔女役を演じるとはまり役ではあるけれど、この役はアホの子なので、デカい40近くの女性が演じるには大分きつめ。ニコール・キッドマンのこの感じの役は全く似合っていない。
ウィル・フェレルは初めサングラスをかけたまま登場し何か良い雰囲気はあったのに、サングラス外すと何か物凄い残念な感じ。目が小さく、オランウータン顔の何ともカッコ良くもない顔で、一気に冷めてしまう。それに、普通の演技もドラマ内のダーリン並みにコメディを物凄く押し出していて、俺面白いでしょ?感を前面に出した悪乗り感のある演技で段々うっとおしくなって来る。どうやらこの役は元々ジム・キャリーを予定していたらしいけれど、はしゃぎっぷりはまさにジム・キャリー。しかも吹き替え版で見たら、ウィル・フェレルの吹き替えはもじゃメガネこと、山ちゃんこと、山寺宏一だったのでまさにジム・キャリー。
主役二人がアホの子なのでそこで笑う映画ではあるのだろうけれど、おばはんおっさんが子供みたいなはしゃぎっぷりが早い段階できつくて、話自体は結構おもしろいのに主役二人の演技で微妙な感じになって来る。それに、周りの人も変な人ばかりで、全体的に変な浮き足感。更にドラマ版の「奥さまは魔女」はサマンサが魅力的な主役でおもしろかったから受けたはずで、この映画内でもそういった話が出て来るにも関わらず、このリメイクでは何故かウィル・フェレルのワンマン・コメディにしてしまっているという頭の悪さ。
あと、隣人役のクリスティン・チェノウェスがちっこいキャメロン・ディアスみたい。演技も、コメディの時の変なはしゃぎっぷりのキャメロン・ディアスと似ているし。

当然過去の本当のテレビドラマ版の「奥さまは魔女」の映像を演じる二人が見ているという場面で使ったり、現在の若い魔女のニコール・キッドマンは「奥さまは魔女」を知らず、彼女の親や祖父母世代は「奥さまは魔女」を知っていて、「あれは嘘が多い。」とけなしたりしているくすぐりもあるけれど、それ以外でもマイケル・ケインが缶詰のグリーン・ジャイアントの顔に合成されていたり、アクターズ・スタジオ・インタビューのホストのジェームズ・リプトンがウィル・フェレルをインタビューしていたり、現実との繋がりのくすぐりがおもしろい。
それにドラマの撮影スタジオの外では何故かエジプトの装飾品やセットがドンと置かれているけれど、このエジプト関連の物が撮影スタジオにやたらと置かれているというのは他の映画でも良く見るけれど、これの元ネタってなんだろう?

謎のなのは、ニコール・キッドマンが自分がウィル・フェレルの引き立て役でしかないと気付き復讐を決心した時に急にThe Whoの「Won’t Get Fooled Again」が流れた事。確かに心情的には「We don’t get fooled again」なんだろうけれど、この曲が流れたらどうしたって「CSI:マイアミ」を思い浮かべてしまう。この映画公開時点でもう数シーズン放送しているのに、何でわざわざ急に音楽を挟み込んで来たのだろうか?

この映画って「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」。あの最恐映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」でノスフェラトゥを演じた役者は本当の吸血鬼だったという事にしての映画「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」と同じく、「奥さまは魔女」は本当に魔女だったとした映画。それに、「奥さまは魔女」って魔女とのドタバタの結婚生活を描いていたドラマだと思っているけれど、この映画では肝心のその結婚生活は描かれず、話自体は至って王道な恋愛劇で、やっぱりわざわざ「奥さまは魔女」でする必要はあったのかと疑問ばかり。
設定はおもしろいし、コメディ調でおもしろくしてはいるけれど、配役が不味かった。魔女顔ではあるけれどアホの子が似合わな過ぎるニコール・キッドマンと、コメディが過ぎるオランウータン顔のウィル・フェレルではなく、違う人でもっと抑えたコメディならもっとおもしろく見れたはずなのに。もっとまじめにコメディすれば良かったはず。

☆☆★★★

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