街の灯

2013年04月15日 月曜日

チャールズ・チャップリン製作・監督・主演の1931年の映画「街の灯(City Lights)」。

道端で花を売る盲目の女性に金持ちと間違えられたチャールズ・チャップリン。何とか彼女に気に入られようとそのままで接する。

話的には始まりに「Romantic Comedy」ではなく「A COMEDY ROMANCE」と出て来る様にロマンスが主題なはずなのに、コメディが多過ぎて話が常にボヤケまくっている。前半に自殺しようとしていた男性を助ける話は、彼女との関係に何かに絡んで来るかと思いきや特に無しで、物語上全く必要無し。この金持ち男性も、急にチャールズ・チャップリンの事を忘れたり思い出したりする都合の良さ。目が見ない女性も、チャールズ・チャップリンが直してあげる為に金策や医者に交渉して翻弄するのかと思いきや、何処かの博士が治療法を見つけ、無料で直してしまうのだから、話のおもしろさや哀しさなんて全く無い。最後がどちらともつかない彼女の表情でぶった切り、何とも言えない後味がある事はあるけれど、そこまでが持たず、それだけでしかないし。
何よりこの映画、完全に笑いの時代性が出まくっていて、今見ると笑いが全く起こらない。チャールズ・チャップリンはこの時まだ42歳なのに60過ぎ位の老けた感じに見え、その現在の初老的な人物が必死にコメディしている感じ、おじいさん風なのに子供みたいな感じが何かキツイ。昔は名を馳せたお笑い芸人が歳を取り、笑いも変わっているのにそれでも必死に昔の芸のまま笑かそうとしているけれど、それが空回りし全然おもしろく無い風にしか見えず、今見ると子供騙し的なコメディ。なので、ちゃんと構成考えて、何回もリハーサルして、きっちり練習したんだろうなぁ…という目線が先に来てしまい、全然笑いを楽しめない。それにおもしろい所や動きの大きい所で効果音を入れるという音楽の使い方が、最悪につまらない。
そもそもチャールズ・チャップリンの「背広に山高帽に竹のステッキ」と言う格好が、この映画の時代では古臭い格好で浮いている変なおじさんなのか、お洒落を気取っているけれど似合っていないのか、結構普通な格好なのか、1930年代じゃあ全く持ってピンと来ない。それにチャールズ・チャップリンの、白塗り、付け髭、変な描かれた眉毛とか、説明も無く、キャラクターとしてのチャップリンでしかなく、この映画で何でこんな格好しているのかは意味不明。

この映画、話の設定自体はおもしろかったり、結構良い話なのに、例えばロビン・ウィリアムズジム・キャリーがコメディ映画の主演をすると、彼らの笑かそうとする灰汁の強さばかり目立ち、むしろ邪魔にしかなっていないハートフル・コメディ映画と同じで、チャールズ・チャップリンの笑いが邪魔になっている。チャールズ・チャップリンがパントマイムでの笑いで際立った存在と言うよりは、一人だけ浮いた存在で、話を描くにはわざとらしく、つまらない笑いが余計。一方笑いの方はと言うと、全然笑えもせず、その笑いの場面は本筋に絡む訳ではないのに分量を多くしているので、見ていて退屈して来る。
笑いと哀しみの同居なんだろうけれど、笑いはつまらないし、その割に笑いの部分が多過ぎ、本筋の哀しさを打ち消すしで、全体的にバラバラ。

☆★★★★

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