転校生
2013年01月16日 水曜日大林宣彦監督、尾美としのりと小林聡美共演の1982年の映画「転校生」。
やって来た転校生の小林聡美が尾美としのりの幼稚園の時の幼馴染と分かる。その二人が階段から転げ落ちたら何故か精神だけが入れ替わってしまい、てんやわんやになる青春映画。
これ、今見ると笑ってしまう事ばかり。まず、尾美としのりと小林聡美が子供。歳行ってからしか知らないから、物凄く変な感じ。そして、この「男女の精神だけが入れ替わる」と言うのは、当時なら新しく見れたのかもしれないけれど、今見ると使い古された、擦り過ぎた題材で、今なら使われるのは最早受け狙いのコントか、エロ漫画やポルノといった直球のエロでしかないので、真面目な青春モノをやられてもなぁ…。性欲バリバリな中学三年生がまるで小学生の様な行動しかしないのは何でかと思ったら、この映画の原作が山中恒の「おれがあいつであいつがおれで」が児童文学だからか。それでは主役二人が小学生で、話は同じ。しかし、この映画ではそれをそのまま年齢を中学生にしてしまったからの様。だからただでさえファンタジーでしかない話がよりファンタジーになってしまったのか…。
全体的な展開はまったりで、中盤からは分かった事を繰り返している感じも。
それに演出も微妙。初めから長い間白黒で進むのだけれど、白黒なので折角の尾道の景色が色褪せた寂れた感じにしか見えず、台無し。暫くしてからカラーの尾道の景色を見せられても、白黒で見ているので感慨も半減。
それに、小林聡美の母親役の入江若葉が明らかに台詞噛んで言い直している場面が、取り直しもせず入っていたり。
最後立小便して、それを見ながら感動して泣いてしまう場面には笑ってしまったが。
この映画はやっぱり尾道の景色が前面に出ている。わたしは以前一回行った事あるけれど、その時はそれ程観光地化もされておらず、商店街もうらびれた感じで良い雰囲気だったのに、最近の映像だと結構観光地化されていて、この映画を見ると、活気のある地方都市から寂れた地方都市に、そして観光地へと変わった尾道の時代の移り変わりに怖くなり、哀しくなって来た。ただ、夕日の中の島を渡る船の映像は最早ファンタジーで素晴らしい。
主役の二人はどちらも17歳にしては良い演技。入れ替わった後は、ちゃんと見た目もお互いっぽく見え、中身が違う風に見えるし。ただ、二人の差異を付ける為なのは分かるけれど、尾美としのりの精神が入った小林聡美はそれまでの尾美としのりっぽいのに、小林聡美の精神が入った尾美としのりは、それまで結構男っぽくサバサバとした感じの小林聡美だったのに急に女子っぽくなり過ぎ。変化の急激さに違和感。
小林聡美はやたらと裸になる場面が多く、17歳にしてよくしたな。ただ体が筋肉質で中身以上に男子っぽい。中盤以降小林聡美も乗って来たのか、今現在の自由な感じな演技の前段の様な演技を見せて、「あっ、小林聡美!」とニンマリとしてしまう。
この映画、この公開当時やそれから時間が経たない時や、この主役二人位の年齢の時に見ないと「児童文学を上手く映像化しましたね。」以上の感想も出て来ない。中学生の頃の感覚なんてこれっぽっちも憶えていない身だと、おもしろくもつまらなくないまま「ふ~ん…。」でお終い。そう、この映画おもしろくも無いけれどつまらなくもないという変な感じの映画。
☆☆★★★