独立愚連隊

2013年01月15日 火曜日

岡本喜八監督・脚本、佐藤允主演の1959年の映画「独立愚連隊」。

日中戦争で中国の戦場を馬に乗って飛び回る新聞記者の佐藤允が、ある町の部隊の駐屯地を訪れる。彼は戦死した一人の見習士官に興味を持ち、彼が死んだという独立愚連隊と呼ばれる部隊を訪ねる。

今昭和の戦争モノになると、どれもこれも似た様な重苦しい話ばかりだけれど、これは結構軽い感じで、話の進め方も推理モノ。従軍記者から見た戦争の実情を描くのかと思いきや、身分を偽る主人公が戦闘中に心中した兵士を調べ始め、徐々に推理サスペンスモノだと分かり始める。何かしらの隠し事があって怪しいのか、単に癖のある人物なのか分からない兵士達との会話は、表面は朗らかに、しかしお互いに相手の本心を探る様な意味深なやり取りで、重苦しくならず、非常に軽快でワクワク感がある。
何より主人公の佐藤允が非常に良い。新聞記者だという事もあってか、下手でやんわりと入って行くけれど交渉は上手く、相手をそれとなく自分の思う方へ誘導する様な上手の人物。銃の腕前は凄いけれど、明るく軽い兄ちゃんの様な感じで表情も清々しく、気持ち良い人物。何より彼の存在がこの映画の雰囲気を作り上げている芯。

ただ、話は間延びする部分もあり、サスペンスとしてはもう少しポンポンと行かないと折角の展開を飽きさせてしまう。それに皆の喋り方が昭和30年代の、この時代のサラリーマンの様な変にかしこまった喋り方なのも気になる。

壊れてしまった大隊長役で三船敏郎が出て来るのだけれど、ヤバい人なのに笑えてしまうと言う三船敏郎としては変わった役所。出番は少しだけれど、非常に強烈な印象の残す。
怪しい中国人ヤン亜東役で、訛りのある日本語喋り、サングラスかけて出て来たのが鶴田浩二だったので笑ってしまった。
それ以外の人物も中谷一郎や中丸忠雄とか、皆濃く、人物が立ちまくり。

分かり易い直球の戦争批判の映画ではなく、個別の犯罪を描いてそれを徐々に見せて行く推理サスペンスで、近年のハリウッドの同じ様な推理サスペンスモノの様な展開。しかも、ちゃんと犯人との決闘場面まで完備していて、最初の主人公の銃が上手いという人物説明がニンマリする結末を見せたり、最終的に大銃撃戦になりと、ちゃんとエンターテイメントしている。根本的に戦争に対する虚しさが流れているので渇いた感じもあり、戦争の中の人々の暮らしている姿を笑いを持って描いてもいて、ほんわかとして軽快な笑いも出て来る。根本がしっかりしつつの娯楽映画で、役者陣も濃いのでなかなか楽しい映画。

☆☆☆★★

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