インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

2013年01月09日 水曜日

ブラッド・ピットトム・クルーズキルスティン・ダンストクリスチャン・スレーター共演の1994年の映画「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア(Interview with the Vampire: The Vampire Chronicles)」。

原題通り、吸血鬼が人間にインタビューを答えながら吸血鬼としての人生を振り返る。

最近では「トワイライト」が当たり、アメリカでは似た様な女子向け吸血鬼モノが多くなっている様だけれど、男前の吸血鬼モノの走りってこの映画かも。
まあ、そんなトム・クルーズとブラッド・ピットが吸血鬼だからとイチャイチャする。モンスター・ホラー映画ではないし、怪物としての哀しみを描くには「フランケンシュタインの怪物」よりも弱いし、人間と畜産や肉食の比喩なんて無いし、おっさんが銃ぶっ放したり、格闘するだけの男子向けアクション映画とは逆の、男前が悩むという、まあ、女子向け、ゲイ向けな話と雰囲気ばかりの映画なので、「ふ~ん…。」以上は思わない。

トム・クルーズとブラッド・ピットという、当時の美形男前が吸血鬼を演じているのだけれど、もう今では二人共おっさんになり、どちらかというとアホっぽい役ばかり印象の強い二人が、モンスターモノではなく真面目に人生を見せる吸血鬼を演じているのを今見ると何だか笑ってしまう。更にアントニオ・バンデラスが出て来ると、長髪の上、おかまちゃんメイクでヘラヘラ笑ってしまった。
途中から、幼い娘を自分の所に勝手に連れて来て自分好みの女性に仕上げるなんて「源氏物語」的展開になり、自分の好きな女性が永遠に体は子供のままというロリータコンプレックス的展開になり、けれども何時の間にかそれも脇に追いやってしまう展開の散漫さは痛い。
それに突っ込みが多くなってしまうのも痛い。まずクリスチャン・スレーターがブラッド・ピットに取材したらたまたま吸血鬼だったなんて何じゃそりゃな導入。一切老けないのに同じ場所に住んでいたり、収入があるのか無いのかも分からず、他人を殺したり、財産を乗っ取っているなら人間に怪しまられているはずなのにその描写は無いし。吸血鬼になると髪の毛は長くなり、切っても直ぐ生え長くなるなんて、耽美さを馬鹿にしたパロディでちょっとおもしろいけれど、やっぱり何じゃそりゃ。ブラッド・ピットが映画の中で朝日を見る場面があるのだけれど、そこで流れる映画は「吸血鬼ノスフェラトゥ」だったのは当然として、吸血鬼はスーパーマン的な所があるからか、映画「スーパーマン」の一場面を挟むという演出感覚の悪さ。そこは長い事ぶりに映像だけれど朝日が見れたという感動の場面なのに、急に青タイツで赤マントのクリストファー・リーヴが宇宙を飛んでいる場面が入れば笑ってしまう。また、オチも酷く、じゃあ今までのトム・クルーズは?と全く理屈が無い急激な落としで呆れた。この無意味な意外性なんて、いらんだろうに。

演出的にも、そりゃそれ以外無いけれど、やたらと手首に寄ったり、わざとらしく首筋を開けてこちらに見せたり、血を吸う為に噛みついたり相手を殺そうとしたら音楽「♪ジャン~」って、分かり易い演出で、少々しょっぱくも。一番酷いのは、フランスで新たな吸血鬼が登場した時、カメラ固定で舞台を回転させて壁を歩いている様に見せる方法。今更過ぎる上でげっそりする上に、舞台が回転し始めるとカメラがブレブレになるという撮影技術の低さ。その映画では監督ニール・ジョーダンが微妙な感じ。

吸血鬼の苦悩を真面目に描いてはいるけれど、必要以上に耽美的雰囲気を出しているので、人気男前スター俳優によるヴァンパイアコントに見えて仕方ない。でも笑える話でも無く、哀しさにしてもこの吸血鬼はマイノリティーの比喩でもなく、何かの比喩であるならば単に人を殺したくてたまらない殺人鬼の苦悩でしかないので、見終わっても成程とも、へ~とも関心が起こらなかった。設定的にもっと盛り上がるはずなのに、ずっとたるんだまま進んで展開は退屈だし、インタビューだからかブラッド・ピットが終始自分酔いな感じなのも盛り上がらない理由か。

☆★★★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply