オデッサ・ファイル
2012年09月24日 月曜日フレデリック・フォーサイスの小説が原作で、ジョン・ヴォイトが主演の映画「オデッサ・ファイル(The Odessa File)」。
一人の記者が偶然死んだ老人の日記を手に入れた事により、その第二次世界大戦中のナチスに関する内容に興味を持ち、過去と現在でも暗躍するナチスを調べ始め、そのナチス残党達に狙われて行く。
この原作小説はフレデリック・フォーサイスが相当情報を調べ書かれている様で、劇中の時代は1963年だけれど、原作小説が出された1972年や、映画の製作年1974年では、収容所の現実や、ナチスの残党が過去を隠し社会に溶け込んでいるという、まだ過去を引きずる恐ろしい実態は相当な衝撃や反響があったと思う。ただ、この映画では現実と創作物の中間を描いているので、現在から見ると普通な創作の物語で結構微妙な感じ。始めは収容所での実態を描き、その実態を伝えようとする社会派な話かと思いきや、記者のはずが敵に潜入とか段々とスパイモノになり始め、徐々に普通なサスペンス映画になって行く感じ。主人公も人道的に燃える記者かと思いきや、最終的に単なる復讐でしかない事が分かると、全てが矮小化し、これまでの展開が非常にしょうも無く感じられてしまうし。
展開は非常に小説的。原作をなぞって映画にした様な感じの印象を受け、映画としては非常にもっちゃりしている。丁寧と言えばそうなのかもしれないけれど、そんなゆったり見せても緊迫感が出て来ず、何だかまどろっこしさばかり感じてしまう。大した盛り上がりも無く、二時間以上引っ張られるのは辛い。
一番の違和感は、場所はドイツなのにやたらと英語が通じる事。政府関係の人なら分からなくもないけれど、街の普通の人や、おじいちゃんまで英語を理解し話すので、アメリカ映画の都合良過ぎな部分が出過ぎ。ジョン・ヴォイトがドイツ人として潜入するのに、元ナチスの将校との会話は英語なんて馬鹿げてる。その人物の経歴を憶える前にドイツ語の勉強だろうと。
何と言ってもジョン・ヴォイトが若い。1974年の映画なので39歳だけれど、歳を取ってからの印象しかないので若さをより感じる。しかし、途中に老けた人物に変装するのだけれど、その姿は痩せてはいるけれど最近の歳を取ったジョン・ヴォイト。役作りや演技はなかなか。
社会派の顔を見せる割に、段々と普通なサスペンスに落ち込み、間延びする展開と見せ方で、折角の設定やジョン・ヴォイトも台無しな感じがする。その他の関係人物も結構見せるのにその後の関わりが特に無く、それが何だったのかまとまりが無い感じで、もっと小気味良く見せれば十分おもしろくはなっただろうと思えてしまう映画。
☆☆★★★