イントゥ・ザ・ワイルド

2012年09月20日 木曜日

実際にいたクリストファー・マッカンドレスを基に、ジョン・クラカワーが書いた小説「荒野へ」を原作とし、ショーン・ペンが監督・脚本をした映画「イントゥ・ザ・ワイルドInto the Wild)」。

恵まれた環境や、物が溢れる社会に違和感を感じ、アラスカへと旅を始めた若者のロードムービー。

こういう良いとこのボンが日々の暮らしに飽き始め、自分を見つめ直す旅に出るという話自体全く持って興味を引かないし、古典小説の台詞を引用したり、詩的な文章を喋る様な感傷的というか、小寒い20代の若者が自分に酔って独り言を言ったりとか、そんな奴は更に興味は無い。しかも、演出として人物の思いは常に独白というのがうっとおしい。原作が小説だからといって説明的過ぎで、役者の演技を補う訳ではなく、話の軸が独白の方で、役者が脇的になる事が多くなると、「だったら小説読んだ方が…」と思ってしまう。

さっぱり分からないのは、世捨て人を気取った感じはあるのに、結構文明社会を利用している所。自分で自分の自動車を壊して物質が溢れる社会から決別したはずなのに、ヒッチハイクで自動車に乗せてもらうし、「お金や斧に頼らず、自分一人で生きて行く!」と言いながら廃棄されたバスで暮らし、銃で獲物を仕留めるし、思い切ったはずなのに非常に中途半端な感じ。普通、大自然の中で生きて暮らそうとするなら自分で家建てようとするのに、それもしないし、結末も「そりゃそうだ」なモノ。
見ているとこの主人公は、自然暮らしに憧れたと言うよりは、自分が感じる不満に対する反抗として自然の中で暮らしているだけなので、行動力はあるけれど中高生の様な恥ずかしさに、共感や関心を感じる事も一切無く終わって行った。
最終的に、町に戻って来る様な挫折感しかない様な終わりでなく、望んだモノの中での終わりだからハッピーエンドで良かったじゃないと思ったし。

主人公のエミール・ハーシュは、この無謀な理屈馬鹿の若者を良く演じてはいるけれど、脚本的な部分や演出の部分なのか、いまいち考えている事が掴み難い感じではある。だから、本人が何がしたいのか分からない日々に、見ている方が付き合わされている感じは良く出ていたけれど。あと、痩せこけて死にかけているけれど、作られたガリガリなので感心はするけれど、血色が良過ぎて緊迫感は無い。

最後に実際のクリストファー・マッカンドレスの写真が出て、これがある程度の実話だと分かるけれど、実話だと分かると実際の所は本人しか分からない事がより強調され、逆に作り物感は強くなる。そして演出的にも、この延々とどうでも良い御託を並べ立てて「ふ~ん」とも思わない、青春の悩みだけを描いた映画って退屈以外の何物でもない。見事に響かない映画だった。

☆★★★★

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