プチ・ニコラ

2012年08月09日 木曜日

バンド・デシネの有名作で、現在でも売れ続けている「アステリックス(Astérix)」や「ラッキー・ルーク(Lucky Luke)」の原作者でもあるルネ・ゴシニ(René Goscinny)と、作画ジャン=ジャック・サンペ(Jean-Jacques Sempé)による、1959年に第一作が出された子供向け絵本「ル・プチ・ニコラ(Le petit Nicolas)」を2009年に映画化した「プチ・ニコラ(Le Petit Nicolas)」。

小学校低学年位のニコラの日常を、愉快に描く。

子供の普通の日々の生活で、特に劇的な事も無いけれど、小さい時の毎日が発見と楽しみの連続だったという感覚が非常に出ていて、見てて楽しいし、心地良い。

何より子供達の描き方が上手い。将来の夢から登場人物達の紹介に入り、それが軽快で「こんな子供いるいる。」と頷きまくる。しかも、その初っ端ですでに人物が皆立っている。登場する子供達は、金持ち、デブ、調子乗り、変わった子等、本当に子供向け漫画の登場人物の様な程の個性が秀でまくっているけれども、至って普通な子供達で、描き方も単に可愛らしいという訳でなく、小さい子の馬鹿だからな可愛らしさ、楽しさを描き、活き活きと飛び跳ねまくっている。そのアホさは、両親に捨てられるかもしれないという不安だったり、闇夜の急な怖さだったり、女の子見ても「綺麗だけれど、女の子じゃあつまらない。」という男の子感覚だったりと、その共感出来るアルアル加減にニコッとしてしまう。
その子供達はまだ幼いのに、皆個性派おっさん俳優の様な味がすでにある。ちゃんと表情の演技できっちり見せるし、場面場面で必要な演技するし、その演技が鼻には付かないし、それで子供が表情で笑い取れるとは凄い。監督のロラン・ティラールの子供達の活かし方が半端無く上手い。
ロラン・ティラールは監督だけでなく脚本も書いていて、子供の感覚の見せ方が上手い。時々挟む、子供達の妄想が漫画的だったり、結構ドタバタコメディなんだけれど、何を考えているのか分からない、何も考えていないからの突飛な行動だったり、子供の感情の機微を見せ、それを子供の表情で見せるんだから凄い。
物語の構成も、子供の支離滅裂な行動も、途中途中に大人の物語や学校の話を上手く配置し、次々と色々な事が起こり飽きさせないし、伏線も張って最終的にそれがスッとまとまり、泣けるし、心地良いしと、非常に上手い。

舞台はフランスだし、時代的に数十年前なので、文化風俗的に興味も行く。小学校の身体検査でロールシャッハテストしていたのには驚いた。、

問題は主人公ニコラの両親が結構歳行っている事。ニコラは幼いのに、父親役のカド・メラッド(KAD MERAD)は頭は禿げ上がり、実際の年齢も45歳、母親のヴァレリー・ルメルシエ(Valérie Lemercier)も45歳で見た目的にも行っているので、もう十歳位若い人でも良かったんじゃとは思ってしまう。でも二人ともコメディの人だそうで、演技はしっかり見せるし笑わせる。

全編に渡り、子供のアホさの可愛さを楽しむ映画。この小さい時の何気無い日常が楽しさや興奮で溢れていたという感覚を見事に描いている。ワクワク感と不安感、喜び、緊張を子供達が見せ、見ている方もそれに乗っかって行けるのは、ロラン・ティラールの監督と脚本の上手さ。
楽しく笑って、その真っ直ぐさに泣けもする、非常に素晴らしい映画。

☆☆☆☆★

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