愛情物語

2012年05月27日 日曜日

実際にいたピアニスト、エディ・デューチンの生涯を描いた映画「愛情物語(The Eddy Duchin Story)」。

エディ・デューチンが如何にしてピアニストになり、どの様に生きたかのお話。
展開は、才能があったのか良く分からないけれどあっさりピアニストとして成功し、恋愛もベタなメロドラマで大しておもしろくない。その後に不幸が続く展開になっては行くが、深く描かれる訳でも無く、さらっと撫ぜる感じで、あんまり良くない。それは20世紀前半ショービジネス、エンターテイメント業界の話なのに、周りは良い人ばかりで、厳しい人間模様や、胡散臭い金銭関係とかは一切無いし、エディ・デューチンの生涯の話だから彼中心の話なのだけれど、周りの人間の想いがほとんど描かれないので、物足りなさが沢山だから。デューチンのマネージャー?の想いだったり、息子を預けられ、何年も会いに来ない事をどう思っているかさえ良く分からない妻の両親とか、主人公以外の人物達の空気感、都合良く配置されている感は強い。
それにこの映画だと、ほとんど苦労せずあっさりピアニストとして成功し、美しい妻を手に入れ、更にあれ程想っていた妻の事を忘れたかの様に美しい女性に惚れ、惚れられ、彼女をあっさり後妻に迎え、数年もほったらかしにしていた息子とも心を通わせ、余りに上手い事行き過ぎ、余りに出来過ぎな感じ、余りに綺麗な感じで描かれるエディ・デューチンを見ていたら、最後に死んで「良し!!」と思ってしまった…。綺麗過ぎるメロドラマって本当につまらない。

エディ・デューチンを演じるタイロン・パワーが初めて登場した時「大学出て…。」と言っているので20代前半なのにどう見てもおっさん。しかも結構いかついおっさん。実際タイロン・パワーはこの映画製作時の1956年の時は42歳。新進気鋭の若者には見えず、無理あり過ぎ。後半になると50過ぎ位の老け顔にまで見えて来る。ただ、ピアノ演奏の演技は凄い。実際に弾いている訳でなく、別のピアニストが弾いた音に合わせて鍵盤を押している様で、良く見ると鍵盤の押しが弱い様に見えるけれど、ちゃんと弾いている様に見え、手だけ別どりなんて温い事はせず、弾いている手から引いてもちゃんとタイロン・パワー本人。相当練習をしたであろうというのが見えるけれど、自然なピアニストとして見え、役者として立派。
ただ、1930年代頃のジャズなのか、何音楽か分からないけれど、この「どう洒落ているでしょ!」感を前面に出している音楽は苦手だし、そもそもピアノの音があんまり好きじゃないので、音楽を聴く映画でもあるのに、引きは無い。後半のリハーサルの時に隙を見て子供達が演奏し始め、それに合わせてタイロン・パワーも演奏し始め盛り上がって行く所なんか、その音楽の盛り上げ方と言い、少し心が通じ合ったかなと言う演出には、臭さでゲロ吐きそうになった。

1950年代の映画だからしょうがないのかもしれないけれど、外は実際に外で撮影しているのに、室内に入ると明らかにセット。やたらと天井が高く、照明もバンバン当てまくっているし、作り物感は一杯。それに、演奏部分の以外の音楽の使い方がメロドラマで安っぽい演出。

展開、演出共にメロドラマ過ぎて白けて来る。一応喪失は描かれるけれど、ピアニストとしては特に挫折は無く、憧れの仕事も成功し、人間関係も上手く行って、最後は綺麗に終える事が出来、さぞかし気持ち良いだろうねぇ…と、斜から半目で見てしまった。

☆☆★★★

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