フロント・ページ

2012年05月26日 土曜日

戯曲「フロント・ページ」をビリー・ワイルダーが映画化した「フロント・ページ(The Front Page)」。

新聞屋に嫌気が差し、結婚を機に辞めようとするけれど、事件が起こると長年の習慣は抜けず、やっぱり記者として駆け回ってしまうジャック・レモン
絞首刑を取り巻く政治的な思惑だったり、社会問題を扱っていたりするけれど、新聞や新聞記者を芸能ゴシップ雑誌や芸能記者並みの下衆い感じで描いている皮肉的なコメディ。古今東西、読者や視聴者って下衆い覗き見大好きって事か。
前半は少々何だかな?と思えるけれど、一端話が走り出すと止まらぬ調子の良さ。展開と言い、台詞と言い、本当に流れる様な早さで、会話劇も巧者達の演技で非常に楽しい。何だかんだ言っても、周りの話は耳に入らずひたすらタイプライターを打つジャック・レモンは、一番楽しく、盛り上がる所。
ジャック・レモンは非常にイカした洒落たおっさんで、注目も話も彼を中心に回っているのだけれど、最後まで見ると編集長のウォルター・マッソーが持って行ってしまう。口が悪く、強引で、上手い事嘘を付き、嫌な奴なのに、見ていると最高に楽しい人物。もう最後の方に登場してからは彼が全員を喰い、ジャック・レモンさえ喰いかねない大活躍。結局この二人の映画なんだなぁと。でも、何で新聞社の編集長ってこんな強引で口悪いのばかりなのだろうか?デイリー・ビューグルのJ・ジョナ・ジェイムソンもこんな感じだし。
スーザン・サランドンって歳を取ってからしか知らなかったので、この若いスーザン・サランドンにちょっと驚き。凄い存在感のおばさんではなく、可愛らしい女性だったりする。何より謎なのが、この若いスーザン・サランドンが何で50過ぎのおっさん、見た目は老年のジャック・レモンに惚れて結婚する事になったのかだ。特に描かれる事も無いので不思議なまま終わった。スーザン・サランドンの方は良く分からないけれど、編集長のジャック・レモンに対する愛?執着?が恐ろしい程で、こっちの方が分かり易い。

監督だけでなく、脚本もビリー・ワイルダーが書いている上、演出も椅子の背もたれに座っていたジャック・レモンが、そのまま前を見たまま腰を浮かせて背もたれにかかっていた背広を取らせる所とか、ちょっとした顔の動きとか、奥行きを使っての場面の見せ方とか、上手いし楽しい。

正面切って笑わせる様なコメディじゃあなく、ひねくれ、黒いくすぐる様な笑いなのに、どこか温かさもあり、良く出来た劇だと思わせる上手さを持った映画。

☆☆☆☆★

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