ワールド・オブ・ライズ

2012年05月22日 火曜日

レオナルド・ディカプリオラッセル・クロウ共演の映画「ワールド・オブ・ライズBody of Lies)」。

中東でのアメリカの情報部員の対テロの諜報活動の話。派手なスパイ映画ではなく、情報の仕入れ方の違いで起こる失敗や、騙し騙され、追い詰め逃す心理戦、無常過ぎる人の使い方を描いていて、リドリー・スコットらしい武骨でねっとりした、おっさん好みな映画。全てが情報戦で、情報の為にはトコトンしてしまう、綺麗事が通じない恐ろしい世界を見せる。
イラクでの出来事は、映像は偵察機から、音声は携帯電話で、アメリカから同時間で見ているのは、そんなに目新しい訳でも無いが、世界の小ささに何かゾクゾクして来る。そして、この対比がドンドン明確になって来る。片やディカプリオは現場で命張って動いているのに、ラッセル・クロウはその彼の話を子供の世話をしながらのながらで聞いていて、生きている世界が全く違う。また現場では自分達のやり方で捜査を進めているのに、現場での判断が事務方の上司にかき乱され、悪い方に回り出したり、各人物がそれぞれの世界、価値観の中で生きている事を見せ、常にすれ違い、掛け違いが起こり、上手く行かない。見ている方としても、遠く離れた場所でのテロを阻止する為に、中東で駆け回る事が一体何なのか、原因と起こっている事と捜査の乖離にクラクラと目眩がする様な感覚を憶えて来る。
話は突然始まり、一から順に説明する訳でなく、垣間見える出来事を切り取って見せる不親切な造りなのだけれど、そこから状況を理解して行く、読み取って行く様な造りと言い、常に現実味はあるけれど迫力と緊張感を持ち、片時も目を離せない映像のリドリー・スコットは流石。だけれども街中での爆破テロを見せるのは、非常い良く出来ている分、見ていると流石にキツイ。

ラッセル・クロウは見事に役作りしている。悪役とも違う嫌な奴をきっちり作り込んで、流石に上手い。その白髪の老けた感じで、少し太り気味で、うつむき加減で眼鏡の上から覗き込む姿を見ていると、「CSI」のギル・グリッソムにばかり見えて仕方ない。
一方レオナルド・ディカプリオは、髭生やしているけれど何時ものディカプリオ。最近は役柄的に、こういう嫌な奴とも信念が強いとも見える役が多く、設定が良いのでなかなか良いのだけれど、やっぱり30代なのにおぼこい感じは否めない。もうちょっと老けたら幅が広がる気がするけれど。
この二人だけでなく、ヨルダンの局長役のマーク・ストロングが強い印象を残す。アメリカ側の二人は砕けた格好だけれど、彼は常に背広をビシッと着こなし、笑わず自分の仕事をし、単なる引き立て役ではなく、全ての上手を行く活躍。見ていたら彼はてっきりアラブ系だと思っていたのだけれど、演じていた役者の名前がマーク・ストロングだったので何処の人?と調べたらイタリア系オーストリア系イギリス人だった。しかも本当は綺麗に禿げ上がった頭。この役と普段とは全然別人に見える。映画「シャーロック・ホームズ」でブラックウッド卿役で出ていた時も思ったけれど、彼は髪の毛があるとアンディ・ガルシアに見えて来る。

無常な諜報活動と、誰も何も報われない身震いするテロの現場を、抑えた迫力で二時間見せ続け、見終わった後には少しホッとするけれど、ドッと疲れが来る映画。それだけ真剣に見入る良く出来た映画。

☆☆☆☆★

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