死刑台のエレベーター

2012年04月21日 土曜日

ルイ・マル監督初作の映画「死刑台のエレベーター(Ascenseur pour l’échafaud)」。

行き成りの自殺に見せかけての殺人から、エレベーターに閉じ込められて、題名にもなっているのでそこからの脱出が話の主題になって行くのかと思いきや、馬鹿な若者の恋人二人の話が中心になり、一体何処へ行こうとしているのか掴み所が無い展開になって行くので不思議な感じ。その若者達の話が絡んで来て、主人公の犯罪話が意外な方向へ進むのは、「そっちじゃないけれど…。」と主人公の訳の分からない事件に巻き込まれる二重構造でおもしろいのだけれど、それが始まるのが遅過ぎる。始まりのジャンヌ・モローのアップの独白からの、モーリス・ロネとの二人のカットバックでガッツリ掴まれたけれど、展開がゆったり過ぎてサスペンス的な盛り上がりは後半の、しかも大分過ぎてからになってようやく出て来るので、キビキビとして欲しい所。基本的に主人公モーリス・ロネは間抜け、若者二人は馬鹿なので、何かをしようとしても特に何も起こらないというのが見ていても飽きを見せてしまう。
ジャンヌ・モローが間男を探し求めて、マイルス・デイヴィスのジャズが後ろでかかる中、夜の街を歩き回る気怠さは非常に良い感じなのに、他の部分、特にサスペンス部分の減り張りが無く、ダラダラと時間が流れてしまっている。
最終的に引っ張った割にあっさり過ぎる程の解決を見せてしまい、前置きが長い分肩透かし感は満載。それに、最後の二人の写真は綺麗に撮れているけれど、密会の二人を誰が撮ってくれたのだろうか?

サスペンス映画としては間延びし過ぎでいまいち過ぎ、恋愛モノとしてみると気怠い雰囲気があって良いのだけれど、本来は主人公二人が陥る厄介な事件の導入として存在している本筋に沿える程度の脇道である若者二人の話に時間を割き過ぎているので、その信頼と裏切りの恋愛部分の話が薄まってしまっているのが勿体無い。ヌーヴェルヴァーグの雰囲気はあるのに、サスペンスとしても、恋愛映画としてもどっちつかずで、上手く噛み合ってはいない感が強い。

☆☆★★★

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