デルス・ウザーラ

2012年03月27日 火曜日

黒澤明が日本から数名の製作陣だけを連れてソ連で撮った映画「デルス・ウザーラ(Dersu Uzala)」。

物凄い淡々とした、もうドキュメンタリー。途中に入るナレーションもあってか、古いBBCのキュメンタリーを見ている様。長回しワンカットが多く、正直言うと間を持たせ過ぎて、少々退屈して来る。
ただ、森の中では驚異の観察眼を発揮し道を示し、銃を自在に操り、自然をまるで人の様に詩的に語る猟師のデルス・ウザーラが物凄くカッコ良い。まさに憧れる様な仙人。このデルス・ウザーラとの探検家ウラディミール・アルセーニエフの交流は、デルス・ウザーラに対する尊敬の念と、厳しい自然の中だからこそのほっこりさ加減が強調される付き合いは見ていて心温まる。
見所はシベリアの大自然。ただ、フィルムの保存状態が良くないのか、見ていても映像が波打つ位ムラがあり物凄く画質が酷い。TVのデジタルハイビジョン放送を見た後に、同じテレビでアナログ放送見た位の画質の悪さ。どうやら70mmで撮影したけれど、ネガフィルムが35mmで送られて来てそれをプリントし為の様。オリジナルの70mmのフィルムは日本に無いらしい。完璧主義者の黒澤明が、ソビエトで実際に撮った景色が、こんな荒い映像では勿体な過ぎる。どうにかして新プリント版で、綺麗な風景を見てみたい。
デルス・ウザーラがロシアの隊長を「カピタン」と呼ぶのだが、わたしの中で「カピタン」と言えば、リッチー・ヴァレンスロス・ロボスの「ラ・バンバ(La Bamba)」の中の歌詞「♪Soy capitán. Soy capitán. la Bamba bamba…」を思い出し、それが頭の中で再生されてしまう。

黒澤明の強烈な印象を残す激しさや、刺激は強くは無いのだけれど静かに流れる時間と、デルス・ウザーラの魅力でほんわかし、無常観と何とも言えない悲しみを持った映画になっている。ただ惜しむらくは画質の悪さで、景色の美しさは半減以下、大分興を削がれてしまう事。

☆☆☆★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply