ハーバード白熱教室 Justice with Michael Sandel

2010年06月22日 火曜日

たまたまTVのチャンネル回していたら何の番組か分からずも、つい見入ってしまい、あまりに興奮をもたらすので毎週の様に見出した番組が「ハーバード白熱教室 Justice with Michael Sandel」だった。

ハーバード大学での実際の哲学の講義を放送した番組で、これが分かりやすく、しかも楽しさと興味深さと興奮、ワクワク感があるのだ。
講義は番組の題名通りの「正義」についての「もしも、こういう場面では君だったらどうする?」との問題を、講堂いっぱいの真剣に授業を受ける生徒達に質問し、答えてもらい、そこから出て来た意見を様々な哲学者の思想の解説へと繋げて行くというモノ。
「哲学」と言うと、抽象的で段々ややこしくこんがらがって来る印象が強いけれど、このサンデル教授の授業では、実際の事件や、その裁判における判例、また実際の社会での権利や税金、社会保障の根底にはどういった哲学的「正義」があるのかを、身近な判断基準として認識させてくれるので非常にすんなり入って来る。

それにも増して、この番組、授業がおもしろいのは、マイケル・サンデル教授の喋りの上手さと講義の見せ方。
大学の哲学の授業の勝手な印象では、「教授が前で椅子に座って、本に目を向けたままモゴモゴ喋り続けている。」のがある。しかし、サンデル教授は、壇上を縦横に歩き、時には生徒の所まで降りて行き、手振りも交え、生徒達の顔を見渡しながら喋る。喋り続ける時も、時に長い間を取り、ピタッと止まったかと思うと一気に話し出したりと、一本調子ではなく聞かせる、聞き入らせる喋りをしている。それに、生徒の意見や、自分が出して来た話にツッコミを入れて、講堂が爆笑に包まれる様な笑いを取ったりと、ハーバードの教授は喋りの技術が高い高い。
喋りだけでも飽きさせない様にしているけれど、授業も生徒達に自発的に考えさせ、参加させようとする作りになっている。どうやら、授業前にその回の議論についての意見を生徒にブログに書いてもらっているようで、さらに実際の講義でも生徒にマイクを渡して自分の意見を喋ってもらい、それらの議論から教授が論点をまとめ、授業を展開して行く方法をとっており、教授との距離が近くなる、かつ授業に参加しているんだ、授業を作っているんだという意識を持たせる事を非常に上手く作り上げている。生徒が意見を言い終わった後、必ず「ありがとう。君の名前は?」と聞き、「~君が言った意見は…。」と展開させるのも、がっちり生徒の心を掴むだろうし。
さらに、この授業の形式自体が、サンデル教授の主張の重要な要素だったと分かる最終回までの構成も秀逸。毎回の授業も、「じゃあ、今出て来た問題は次週!」と、まるでクリフハンガーで引っ張る連続TVドラマを見ているような作りで、授業が終わる度に生徒からの拍手が沸き起こり、最終回では、生徒全員のスタンディングオベーションが起こるのもうなずける。

あと、さすがハーバードだけあって、生徒はたぶん世界中から来ているであろう、様々な人種、宗教、立場の人々が各人の意見を主張するのもおもしろい所。バラバラな人達が議論するのだから感情的になり過ぎるかと思いきや、しかしサンデル教授は、議論があらぬ方向や攻撃になりそうになると、ちゃんと笑いでその場を収めるし。
この、かっこだけでも様々な人々が集まって静かに授業を聞いて、意見を喋っているのを見ていると、スタートレック的な宇宙SFの雰囲気を感じてしまって、それだけでワクワク感がある。

授業内容はもちろんだけれど、授業を聞かせる、見せ方に非常に感心。教授が喋っている時に、真剣に授業に聞き入る生徒の顔のアップを挟み込むのは編集の力だけど、片手をポケットに突っ込んで生徒を指差して当てる壇上のサンデル教授なんかそれだけで画になるしなぁ。サンデル教授は喋りだけでなく、見入らせる力も持ってる強い教授。
 
 
で、最終回見ていたら、その後の予告でなんと「マイケル・サンデル八月来日!特別講義決定!」と出たので、この番組の流れにも驚き。最近、この番組からなのか、マイケル・サンデルの著書が結構売れているらしいし、サンデル熱が上がっているからの来日か。しかも、受講者を募集するらしいし。でも、どうなのだろう?英語の哲学用語を知っていて、英語聞き取れて、喋れないと、通訳通しての講義や議論だと変な間がありすぎもっちゃりして、「白熱」が妙に白けるとも思うのだが。とにかく、当選は凄い倍率だろうなぁ。

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