新・片腕必殺剣
2024年05月28日 火曜日チャン・チェ監督、デビッド・チャン主演の1971年の香港映画「新・片腕必殺剣(新独臂刀)」
二刀流の武術家レイ・リーは名前を知られる存在になって来ていた。
若い武術家が気に入らないロン大侠はレイを罠にはめて決闘を行って負かして武術界から追放しようと企てた。
ロン大侠は自分が負ければ腕を切って武術から足を洗うとまで言うのでレイはロン大侠と戦うが負けてしまう。
レイは面子から自分の左腕を切り落とし武術をやめ食堂で働く身となった。
他人に心を開かなかったレイだったが食堂にやって来た二刀流の剣士フォンと打ち解け兄弟分となった。
フォンはロン大侠と手を組む虎威山荘の悪行を聞き虎威山荘へと乗り込んで行った。
ジミー・ウォングの「片腕必殺剣」がおもしろかったので続けてその続編の「続・片腕必殺剣」を見ようと思ったら配信に無かったのでこの「新・片腕必殺剣」を見てみた。
「片腕必殺剣」の原題が「獨臂刀」で、「続・片腕必殺剣」は「獨臂刀王」で、この映画が「新獨臂刀」なので主演がジミー・ウォングから変わったけれど一応三作目とはなっているみたい。
そのジミー・ウォングは一・二作目を製作したショウ・ブラザーズに所属していたのが契約等で揉めてゴールデン・ハーベストに移籍。
ゴールデン・ハーベストで一・二作目の続編でもあり勝新太郎の座頭市シリーズとクロスオーバーした映画「新座頭市・破れ!唐人剣(獨臂刀大戦盲侠)」を撮った事でショウ・ブラザーズが怒り、この「新・片腕必殺剣」の製作となったみたい。
なので原題にも邦題にも「新」と付いている様に全く新たな人物の片腕剣士の話になっていて前作までとは関係無くこれだけで見れる映画。
ジミー・ウォングの片腕剣士とはまた別の人物なのでこちらはこちらでおもしろく見れた。
自分の腕に慢心している主人公が負けて腕を切って武術をやめ、鬱々とした生活の中でもかつての強さを垣間見せる様な人間離れした動きをちょこちょこと入れて後半に振り、その悔しさの中で生きている所に自分を理解してくれるかつての自分の様な若い剣士が現れ、主人公を気に掛ける鍛冶屋の娘との三人の関係性が良くて楽しく、若い剣士が出て来た所でこの剣士の復讐で主人公が再び戦うのは何となく分かるけれど最後へどう持って行くの?で見入ったし、最後三十分位の主人公の圧倒的強さのアクションには笑ってしまった。
最後は主人公一人対百人以上?の敵との戦いになり、まあ主人公がバッタバッタと切り殺して行くのは圧巻過ぎて笑えてしまう。
1967年の「片腕必殺剣」からすると徐々にカンフー映画の流行も出て来た事もあったのか、この映画では剣術アクションが早くなってはいるけれどまだ発展途上な感じはあり、敵が無造作にやられ過ぎだったりもしたけれどこの無茶苦茶な戦いを撮ろうと思った事に感心。
それに戦いの場所となっている虎威山荘が凄い場所に凄い建物があり、その前の凄い橋があるんだけれど、この場所は結構序盤から出ていて、この場所って元々こういう所があったの?何かの映画用で建てられたセットなの?とずっと思ってしまう位で、ここで戦うのだから見栄えとしても凄く良かった。
「片腕必殺剣」とこの映画で大きく違ったのは武術に対する方向性。
「片腕必殺剣」では武術は人を不幸にするからという理由で否定的で、結果主人公は武術を捨てて農業を始める為に別の土地へと行ったけれど、この映画では武術は人を不幸にしていたけれどはっきりとした批判的な台詞も無く、主人公も若い剣士も面子や復讐の部分が大きく、最後この後主人公がどうしたかは描かれず。
そこの部分では「片腕必殺剣」の方がおもしろかったかな。
「片腕必殺剣」では利き腕ではない左腕だけになったので今までの剣が上手く扱えず短い剣を使い、訓練して戦えるまでになっていたけど、この映画の主人公は元々二刀流だったので左手でも今まで通りに剣が扱え、しかも超人的な身体能力だったりと戦えるまでの葛藤等も結構省いていた感じもあった。
それに三節棍で突かれて負けとか、剣で軽く撫でられて切り殺されていた位だったのが、若い剣士は体を上下真っ二つに切り裂かれるという結構残酷な場面を急に出して来たのには驚いてしまった。
あと不思議だったのはロン大侠が使う三節棍は三節棍なので節部分で各棍がぶらぶらしているのに突然三節棍が一直線で一本の棒の様になっていたけれどあれって三節棍がそういう仕組みだったのだろうか?
特に三節棍の説明が無いままだったけれどロン大侠の超能力?
最後鍛冶屋の娘が長い橋に死体が溢れかえっている中を死体を気にせず、あれだけの殺人にも引きもせず主人公に向かって嬉しそうに走って行ったけれど鍛冶屋の娘は何か感覚壊れ過ぎの様な気がしてしまった。
この映画、近年流行りのリブート映画だけれどこっちはこっちで鬱々と主人公を描きつつ、最後のやり過ぎ感のあるアクションまで持って行く映画としては中々おもしろかった。
この映画の続編は無いけれど、このとにかく大勢の敵を切りまくるという方向性を更にやり過ぎての続編も見たかった。
☆☆☆★★
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