紀元前1万年

2022年08月05日 金曜日

ローランド・エメリッヒ製作・監督・脚本、スティーヴン・ストレイト主演の2008年の映画「紀元前1万年10,000 BC)」

紀元前1万年のある地域に暮らすヤガル族の村にヤガル族とは違う青い目の少女エバレットが現れ、巫女はそのエバレットがヤガル族の未来を導く存在だと言う。
ヤガル族のデレーはエバレットに惚れるが、突如現れた他部族の部隊にエバレットとヤガル族の人々が拉致されてしまったので数人の仲間と共にデレーはエバレットを救い出す旅に出た。

ローランド・エメリッヒの映画という事で見てみたのだけれど、ローランド・エメリッヒの凄さを感じてしまった映画。
こんな酷い内容でも企画を通せ、多額の製作費を集められ、ちゃんと完成させて世界公開出来るって、ローランド・エメリッヒの映画製作能力の半端無さったらない。
そこが凄過ぎるんだけれど、肝心の内容は大味なローランド・エメリッヒ映画でも相当大味で、見せ場もいまいち過ぎてつまらない。
軸となる話は非常に分かり易いけれど細部や謎に関する説明は放棄して結局何なのか分からないままで終わってしまう事が多く、それもあってどの人物も役が立ちそうな感じだけれど印象に残らず、早い段階から興味は湧かず、見終わってもつまらないまま。

話の軸は惚れた女性を取り戻しに行くというだけの話で、ここはすんなり入って来るのだけれど、それ以外の部分がさっぱり分からない事だらけ。
ヤガル族は雪山に住んでいるのに隙間が空いたスカスカの服で寒くないの?
ただでさえ食べ物が無いと言っているのに、何であんな何も無い荒野のど真ん中に住んでいるの?
他部族は大分遠くまで時間をかけて出かけて来て、少人数で少人数を捕虜にして、また時間をかけて自分の領地まで戻る効率の悪さや、何故そこまでして遠征や手間暇をかけるのか?
他部族の部隊は後の大勢の人々はほったらかしにして去っているけれど、案の定追跡されて、そもそも近場で全員捕虜にすればあんなに遠征しなくていいじゃん。
雪山の直ぐ側にジャングルがあり、そのジャングルを抜けると直ぐ荒野って、まるで狭いオープンワールドのゲームで変化を出す為に継ぎ接ぎした様な世界設定。
ピラミッドを作っていた部族はあれだけの他部族の捕虜がいるのに、どうやって反乱も無く抑えられていたのかよく分からないし、あれだけの数のマンモスを手懐けられている技術?もよく分からず。
神だと言う人間がいたけれど、何で神だと言っているだけで捕虜達が従っているのかも不明。
主人公の父親が出て行った理由も結局よく分からないし、エバレットに関する事も出自とか、青い目の子供の予言の意味とか、エバレットの死んでから生き返る意味とか、全部放棄。

題名の「紀元前1万年」にミスリードされてしまって、この時代に鉄器とかピラミッドとか有り得ないと思ってしまったけれど、現実ではないローランド・エメリッヒ世界のファンタジーだと思って見ればそうなんだろう。
初めにドレッドヘアーで現代英語を喋っている石器時代人という時点で石器時代コントにしか思えなかったし。

ただ、主人公の父親が出て行った理由が曖昧だったり、エバレットの予言の種明かしが一切無かったり、そもそも青い目の子供って何だったの?だし、ピラミッド部族の支配者?が全然顔を見せず、やたらと背が高く、やたらと星の印を気にしていたので、例えば実は宇宙人だったとか何かがあるのかと思いきや何もないまま槍で串刺しで死亡とか、思わせ振りに入れに入れ込んで引っ張りまくっていたのに何も無いままって、脚本としてどうなの?
これって、ローランド・エメリッヒが最後の方でまとめる時に忘れていたとか、面倒臭くなったので放棄した感じがするんだけれど…。

あと、映像も結構酷い。
2008年の映画なのに序盤から背景と人物の合成が浮いていて、非常に安っぽいクロマキー合成みたいな映像の場面があったり、ジャングルの場面は背の高い草を画面の前に持って来て、今誰が何をしているのかが分かり難かったり。

この映画、この内容の企画からこの映画を作れたローランド・エメリッヒの凄さを見る為の映画の気がして、映画自体はローランド・エメリッヒ映画でも最低の駄作だと思う。
ローランド・エメリッヒ映画って基本的に内容が無いけれど、もっと見せ場や上手く掴む感じだったはずだと思っていたんだけれどなぁ…。

★★★★★

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