1917 命をかけた伝令

2021年12月05日 日曜日

サム・メンデス製作・監督・脚本、ジョージ・マッケイ主演の2019年のイギリス・アメリカ映画「1917 命をかけた伝令(1917)」

1917年4月6日。第一次世界大戦中の西部戦線でドイツ軍が撤退した為、イギリス陸軍の第2大隊は翌朝に攻撃を仕掛けようとしていた。
しかし、ドイツ軍の撤退は第2大隊を誘い出す罠である事を航空偵察で知ったイギリス陸軍は、このまま第2大隊が攻撃を仕掛けると1600名以上の兵士の命が危ない為、ウィル・スコフィールドとトム・ブレイクという二人の兵士に第2大隊への攻撃中止命令の伝令を託した。
二人は朝までにドイツ軍兵士からの攻撃があるかもしれない無人地帯を抜けて第2大隊まで辿り着こうとする。

この映画の売りであり、注目するのは全編をワンカットの様に撮影した部分。
これが部隊が攻撃を仕掛ける朝までの短い時間を見ている方にもリアルタイムの様に疑似体験させる様な効果があって緊迫感があるし、常に主人公達をカメラで追いかけているのでドキュメンタリーっぽい臨場感もありで非常におもしろく見れたし、構成も中々上手く緩急を付けていて、ずっと緊張感を持って最後まで見られた。

初めから塹壕の中を歩き回る場面が続き、ここで主人公の部隊や主人公達が置かれている現状の説明や主人公達の人物像をそれとなく台詞に紛れさせながら映像でも説明して行き、この見せ方の上手さで初めから非常に引き付けられてしまった。
その後も塹壕の中で塹壕の外の話を長く描いた後に、いよいよ塹壕の外に出ると誰もいない場所が続いてもトンデモない緊張感を続けながら進んで行く。
ワンカット風で主人公達を追いかけて行くので彼らの緊張や恐怖を追体験している感じになる。
各場面で攻撃や戦闘があった後に幕間的に他の登場人物が出て来て何気無くもその人を描く会話があって、緊張の後の緩和。からの緊張と飽きさせない構成になっているのも上手い。

話は、最後に主人公が全部ではないけれど報われはするあっさりとした引き際になっているけれど、実際の第一次世界大戦だともっと無謀に突っ込み、分かっていた事なのに無駄に人が死んで行ったんじゃないの?と思うと、綺麗過ぎる感はあるのかなぁ?とも思ってしまった。
特に映像が、息の詰まる様な塹壕の中から荒涼とした塹壕の外。
穏やかな草原。
破壊された町。
夜に照明弾が撃たれて、暫くだけ光と影がはっきりする等、凄く印象的な映像が次々と出て来て映像的にも美しいからこそ、あくまで映画としての美しさが際立ったのかもしれない。

ただ、このワンカット風の映像でずっと行くと、見ていてもどうしても「この撮影は相当大変だったのだろうなぁ…」とか、「この場面はどうやってカメラを動かしているの?」とか、「この映画では最早セットではなくて土木工事だ!」とか、「ここでカットを変えたのでは?」という話以外の部分を考える事が多くなってしまい、ある意味没入感という部分では結構途切れたかもしれない。
戦争映画でワンカット風にするとなるとカメラの動きと人物や効果の動きを初めから全て決めなくてはならいので相当な下準備が必要で、現場で何度もリハーサルをやって、本番では全てを完璧に撮影しないといけないとなると、普通のカット割りのある映画と比べるとトンデモない大変さを感じてしまい、そこでわたしのこの映画を見る集中力が違ってきて、相当見入ってしまった。
一方で、カットの繋ぎ目が気になり、主人公が気を失う場面はカット部分だと思うけれど、それ以外でも見続けているとカメラの前を建物や地面などが結構なアップで通り過ぎた場面とか、今までカメラが自由に動き回っていたのに急にカメラの移動が止まってパンしたり、レールに乗せて動かしたかの様に綺麗に横に移動したりする場面が出て来て、「多分これがカット割りの部分じゃない?」と繋ぎ目探しゲームをやってしまっていた。

役者は、主役二人のジョージ・マッケイやディーン=チャールズ・チャップマンが二十代という事もあって、本当に戦争に駆り出された若者感が凄くあって良いし、騒がない静かな演技で中々良い。
トム・ブレイクが死んだ後のウィル・スコフィールドが泥にタイヤを取られたトラックを何かにとり付かれた様に押している時、それまで大声を出さなかったのにこらえていた感情を吐き出す様に大声で叫ぶ場面が物凄い印象に残った。

あと、登場でおもしろかったのが、初めの塹壕の中にいた中尉役がBBCのテレドラマ「Sherlock/シャーロック」のジム・モリアーティ役でお馴染みアンドリュー・スコットで、最後の塹壕の指揮官だったマッケンジー大佐が「Sherlock/シャーロック」のシャーロック・ホームズ役でお馴染みベネディクト・カンバーバッチで、最初と最後でちょっとだけ繋げて来た事。
もし中盤でマーティン・フリーマンが出て来たら笑ってしまった。

この映画、一人の人物の約一日を追った戦争映画としてワンカット風の映像だからこそ見入ったし、だからこその緊張だったし、緊張と緩和の構成も上手かったし、何処がカットの繋ぎ目かを考えて見てみる映画としてもおもしろかった。

☆☆☆☆★

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