オートマタ
2021年11月01日 月曜日ガベ・イバニェス監督・脚本、アントニオ・バンデラス製作・主演の2014年のスペイン・ブルガリア映画「オートマタ(Automata)」
近未来。太陽の活動が活発化し、発生した太陽嵐によって地球の砂漠化が進み、地球の人口は99.7%減少して2100万人になっていた。
人口の減少による労働力を確保する為にROC社が人型ロボット「オートマタ」を開発。
オートマタを使い砂漠化を抑えようとしたが失敗。
都市と砂漠を隔てる巨大な壁を作っていた。
オートマタを安全に使用するために「生命体への危害の禁止」と「自他の修理・改造の禁止」という絶対に書き換える事の出来ない二つのプロトコルが組み込まれて制御されていたが、ある日自己を修理していたオートマタが発見される。
ROC社の保険代理人のジャック・ヴォーカンはこの絶対的なプロトコルを破った技術者を探し出す為に都市の外へと派遣された。
人工的に作られた雲によって雨が多く、寂れた都市の雰囲気は映画「ブレードランナー」的で、絶対に破る事の出来ない条件を破ったロボットの謎はアイザック・アシモフのロボット工学三原則でお馴染みロボットモノだしで、それを合わせて作りました!をやっていて、雰囲気は良い感じだけれど肝心の内容が分かった様な分からない様な…な感じで、見終わると色々と気になった事が多数。
前半は第二のプロトコルを破ったのは誰だ!?のミステリーで進んで行くけれど、これがロボット自身だったというのは分かるものの、絶対に破れないプロトコルは人間には無理だけど作り出したロボットなら破れると言う理屈がよく分からず。
この種のひっくり返しのネタばらしって、絶対に破れないプロトコルが破れてしまうという根本を台無しにしたらミステリーの意味が無いんじゃない?
アイザック・アシモフは絶対的なロボット工学三原則を使って、それと整合性を持たせながらロボット工学三原則とは矛盾した行動を説明するというほぼ推理モノをやっていたけれど、推理モノでそもそもの根本を弄ってしまうと面白味が無くなってしまい、この映画も結局プロトコルを弄れてしまったのでミステリーが台無し。
その第二プロトコルを破った砂漠にいた自我のあるロボットはそもそも何なのかの説明がなく、何かで第二プロトコルが無くなったのかは説明されず、これが都市で何かがあって逃げ出して来た特殊なロボットなの?
第二プロトコルは完全ではなくて、どの機体でも起こりうる事なの?が分からず。
第二プロトコルが無くなった地下道にいたロボットや自らに火を付けたロボットも何処から始まっているのかが説明されていないので、後から思うとこのロボット達の存在も不自然。
もう一つの「生命体への危害の禁止」の方は何故か厳格に守られており、ロボットは人間を傷付けない理由は特に説明はない。
これって自我を持って独自に行動するロボットには結構致命的で、人間とロボットが対立すれば必ずロボットが負けてしまうのでロボットが人毛に取って代わって…とはならない様な気がした。
それと、映画のロボットモノだと何故かフランケンシュタイン・コンプレックスが強い映画が多いけれど、この映画もフランケンシュタイン・コンプレックスの一種で、フランケンシュタイン・コンプレックスのロボットモノは話としてベタ過ぎるし、結構飽き飽き。
映像的には、それ程製作費が高くないからか何とか荒廃した感じを出していて、それも結構良い雰囲気なんだけれど後半はほぼ砂漠なので後半の映像に面白味がなかった。
オートマタのデザインは現実の延長線上のありそうなロボットになっていて良い感じ。
ただ、最後にオートマタ達が作り出した謎の機械のデザインは酷いし、この機械を作り出した理由や存在意味も不明で、これはいらなかった。
役者は、アントニオ・バンデラスって未来モノのSFの印象が無いけれど、この映画では丸刈りにしていて老け感もあり、くたびれた人物として合っていたし、序盤の感情を出さない所から後半で感情を出す感じも良かった。
中盤に出て来たデュプレ博士って、何か訳あり気でもっと登場する重要人物なのかと思ったら、あっさり殺されてしまい、何だろう?と思ったけれど、このデュプレ博士役のメラニー・グリフィスって、この映画当時のアントニオ・バンデラスの奥さんで、だからなのだろうか?
(ちなみにこの映画後二人は離婚している)
この映画、雰囲気は結構良いし、序盤は興味を持って見てたけれど、気付くとこれまでのSFの典型を色々詰め込んで、それがおもしろくなればいいけれど、描きたい事の為に様々な事をぼやかせてしまったので、結局掴み所の無い、掴まれ所の無い映画になってしまった感を感じてしまった。
☆☆★★★