ダーク・スター

2021年10月20日 水曜日

ジョン・カーペンター製作・監督・脚本・音楽、ダン・オバノン脚本・編集・主演の1974年のアメリカ映画「ダーク・スター(Dark Star)」
元々はジョン・カーペンターやダン・オバノン等が作った学生映画だったのを長編映画にした映画。

人類が恒星間航行を実現した未来。
偵察船ダーク・スター号は植民地化の障害となる将来恒星に引き寄せられてしまう様な不安定惑星を爆弾で爆破・消滅させる任務を長年行っていたが、ダーク・スター号は老朽化で故障が多くなっており船長も事故で死亡していた。
航行中のダーク・スター号は宇宙嵐に遭遇し船内の機器が故障。
爆弾に間違った指令が伝わり、何度も爆破命令が取り消されていた。
不安定惑星に到着し、実際に爆弾を発射する段階になり爆弾の切り離し装置が故障して船体から爆弾が離れないまま起爆準備に入ってしまった。
マザーコンピューターからの指令や説得も聞かなくなった爆弾に乗組員達が説得を始めた。

ジョン・カーペンターの初監督映画という事で見てみた。
序盤の空虚な宇宙での生活が、これを宇宙モノのSFでやるので今見ても新鮮味があって捕まれてしまったけれど、中盤辺りから何ともヘンテコなコメディなのか分からない映画になって頭の中がウニャウニャして、笑うでもなく、真剣に見る訳でもなく、勝手に映画が突っ走って行って結構置いてけ堀にされてしまった。

序盤は乗組員は自分達の仕事にしか興味が無く、知的生命体がいる可能性が高い星にも興味が無く、狭い宇宙船の中で同じ面子と延々と顔を合わせ続けて飽き飽きしており、他の乗組員が興味も無く誰も聞かない話を一人でし、何も起こらない移動時間の間の退屈さを紛らわせるだけの空しい時間が延々と過ぎて行く生活を見せて、わたしはこれに捕まれまくり。
SFではあるけれど描いているのは何時の時代でも繰り返される普段の生活に落ち込んだ人々が感じているだろう日常の虚しさを描いていて、これを宇宙モノのSFでやってしまう事が抜群におもしろく、この感じをずっと見てみたい!と思ってしまった。
この当時って、1968年に「2001年宇宙の旅」があって、1977年の「スター・ウォーズ」とかのSFブームに行く時代で、まだ明るい未来のSF感が大きかった時代だと思うけれど、そんな中でこんな空虚を描いたSFをやっているって凄い。
「トイレットペーパーが切れた」と言う台詞とかがとても現実的な台詞で、この当時のSFでやっちゃうのも凄い。

この掴みが抜群で、この映画はこういう鬱々とした日常のSFかと思っていたら、突如ビーチボールに足を付け足しただけのエイリアンが登場して、何じゃこりゃ?と混乱。
しかも、このビーチボールエイリアンを捕まえる為の追いかけっこが長く続き、よく分からないエレベーターでのドタバタや、エレベーターの穴に詰まってしまってからの爆発コントとか、最終的に麻酔銃を撃ったらビーチボールからガスが抜けてしぼんでしまいました…で終わってしまい更に混乱。
その後も宇宙船のマザーコンピューターが爆弾に搭載された自我のあるコンピューターを説得したり、乗組員が船外に出て行って爆弾に説得したり、最終的に宇宙サーフィンで大気圏突入したりと、もう訳が分からない。
見ていてヘラヘラ笑ってしまう面白さはあったけれど、これって何処までが笑かそうとしているコメディをやっているのか、真面目に何かを見せようとしているのかが分からず、ドンドンと頭の中がウニョウニョしてしまった。
ただ、宇宙サーフィンでの大気圏突入は見た目的には抜群に良いし、ニヤニヤ出来るんだよなぁ。
ジョン・カーペンターの映画では「エスケープ・フロム・L.A.」でも突然のサーフィンをやったりしていたけれど、これって真面目な場面からの落差で笑かそうとしているのか、アクション映画でよくある敵からの弾は主人公には一切当たらず無限弾での銃撃戦的な現実の現象無視でとにかくその場の盛り上がりやカッコ良さを優先した場面なのか、どうなんだろう?

あと、その大きな爆弾だと二十基も入らないだろうという大きさなダーク・スター号のデザインは素っ気無い感じが結構好き。

主演のダン・オバノンは脚本も書いているけれど、この映画の五年後にダン・オバノンは「エイリアン」の脚本も書いていると知ってから見ると、ダン・オバノンの五年に何があったの?と思ってしまう。
この映画と「エイリアン」では予算が違い過ぎるし、確かに急に現れて害をなす得体の知れない存在という部分では全く同じではあるけれど、このビーチボールエイリアンから「エイリアン」って、同一人物とは思えないよなぁ。

この映画、初めの宇宙船での空虚な生活でガッチリと掴まれた後に、何だか分からない事の連続で頭の中がグチャグチャになるけれど、見終わると何かサッパリとするという物凄い変な映画で、ジョン・カーペンターのヘンテコではあるけれど何とも表現し難いおもしろさって初めからだったのか。

☆☆☆★★

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