サンクタム

2021年08月30日 月曜日

ジェームズ・キャメロン製作総指揮、アリスター・グリアソン監督、リチャード・ロクスバーグ主演の2011年のオーストラリア・アメリカ映画「サンクタム(Sanctum)」

冒険家のフランク・マクガイルは巨大な地下洞窟の奥深くが海に繋がっていると証明しようと何人もの仲間と潜水を続ていた。
ある日、嵐が来る事を知りながらも調査を行っていると嵐は大きな台風へと変わり、洞窟には大量の雨が流れ込んで来た。
大量の雨水によって通路に岩が挟まり入口からは出る事が出来なくなった為、より深い洞窟から脱出をする為潜水を始めた。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったのと、ジェームズ・キャメロン製作総指揮と粗筋に書かれていたので見てみたのだけれど、父親の冒険家の描写に難が有り過ぎて物語の成立を邪魔しているという駄目な映画だった。

脱出口が塞がれてしまい、まだ未調査の何処に繋がっているのか繋がっていないかもしれない水中の洞窟からしか脱出出来ないという部分は冒険物として設定は結構上手く出来ているのだけれど、父親と息子の物語の中心となる父親が、そもそも自分の判断の甘さが原因で起こっている事なのに他人に高圧的で自分勝手で、しかもクズなので共感性が全く無いままなので物語が成立していない。

まずは初っ端から父親の無謀さと準備の無さで仲間が空気漏れで死亡。
この時、仲間を殺した様にも見える描写にしているけれど、これで周りからの信頼が無くなるとかの展開も無いので、結果何の為の描写なのかよく分からず。
その後嵐が来ているのに危険を深くも考えずに調査を続行して仲間が次々と死亡。
強引な父親について行くと仲間が次々と死亡。
仲間が死んでも「あ~あ。死んじゃった」位の反応で仲間に対して感情は見えず、自分の息子ばかり気にしている。
父親が怪我で動けなくなったら自分で何とかしようともせず、苦しいので息子に自分を殺させるという、最後まで自分勝手で他人を巻き込むクズ野郎。
この父親の設定のせいで洞窟からの脱出も見ていても「こいつに従うと死ぬぞ!ほら、死んじゃった…」だし、次々と仲間を殺して行く父親を見て何故息子が父親を理解して行くのか意味不明だったので、父親の設定や描写が間違っているとしか思えなかった。
最終的に息子だけが生き残ったけれど、この事故調査が行われると、やっぱり父親の判断間違いの連続で息子以外が全員死亡としかならないだろうし。

他の登場人物も死ぬ為だけに存在していて、父親に文句言うけれど父親について行って死亡の繰り返しで何を見せたいんだろう?とずっと思っていた。
逆に仲間を次々と殺してしまうので当然父親に反抗して独自に行動する人も出て来るけれど、結果その人も死亡で本当にただ人が死んで行くだけ。
始めに脱出した仲間がいて、その仲間が外で何かして助けようとする話もあるのかと思ったけれど、そんな事も一切無く、何故いたのかも意味不明で脇の人々の存在意義がよく分からなかった。
その周りの人の死に方も分からない事が多く、一人の仲間は潜水病が発症したので皆から離れてこっそり一人で死んで行くのは、皆に心配をかけたくなかったという事でそこまでするモノなの?
登山家の女性は水が噴き出す中に落ちただけで死亡。
もがきもしないですんなり死んでしまったのはどんな流れの水なの?

そもそも洞窟が海に繋がっていたら何なのかがさっぱり分からなかった。
発見ではあるだろうけれど、そこまで大金と時間と人をつぎ込んでする事なの?とずっと思ってしまっていたのも父親に全く感情移入が出来なかった理由でもあると思う。
それに洞窟が海に繋がっているのを証明するなら人間が潜る必要は無く、GPS装置を付けたアヒルの玩具を大量に流せば良いだけ。
現実の洞窟だったら人間が通れるだけの大きさの穴や通路が必ずある訳ではないだろうし。
何故かこの洞窟は、至る所に人間が通れるだけの大きさの穴や通路が必ずある都合の良い洞窟だったりする。

そして酷いのは日本の配給会社で、この映画は実話に基づくと書かれているけれど、実際には映画の初めに「Inspired by a true story.」と書かれている様に、調べてみたら実話から発想しただけで全然実話に基づいていない。
1988年にオーストラリアのナラボーの洞窟にドキュメンタリー番組の制作で入ったこの映画の製作・脚本のアンドリュー・ワイト含め15人が岩の崩落によって二日間閉じ込められ、全員が助かったらしい。
人が洞窟に閉じ込められたけれど全員が助かったというのが事実らしく、洞窟に人が閉じ込められたという部分以外全く違うじゃん。

この映画、ジェームズ・キャメロンが製作総指揮に入っているとは言え、大量の水が出て来るという部分以外はジェームズ・キャメロンらしさは無い様に思え、ただ登場人物が次々と死んで行って一人だけが助かるという悲劇にしたいが為の脚本の出来が酷いので、まあつまらない。
父親は出来るようで実際は自分のせいで次々と人が死んで行く無能で、人の死に対して大して気にしておらず、人が死んで行っても洞窟が心安らぐとか自分勝手な事を抜かすクズ人間で、この人物ではどんな展開にしても話に入っては行けなかった。

☆☆★★★

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