リディバイダー

2021年05月27日 木曜日

ティム・スミット製作・監督・ビジュアルエフェクトスーパーバイザー、ダン・スティーヴンス主演の2017年のアメリカ・オランダ映画「リディバイダー(Kill Switch)」

近未来。エネルギー使用の増大によって起こっていたエネルギー問題に対し、アルタープレックスという会社がエコーと呼ぶ地球をコピーした並行世界の地球を作り出し、エコーにある物質をエネルギーへと転換して無限のエネルギーを利用出来るとして巨大なタワーを建設した。
元NASAの職員ウィル・ポーターはアルタープレックスに雇われて待機していたが、タワーが稼働して間もなく招集がかかり、データを集めるためにエコーの世界へと赴く。
アルタープレックスの説明ではエコーは人間等の有機物が存在しない世界だったが大勢の人間の死体が転がっており、エコーではタワーに危険を感じた勢力がアルタープレックスを襲撃していた。
ウィル・ポーターはエコーの状況がどうなっているのか分からないまま、データを集めるためにタワーへと行こうとする。

Amazon プライムビデオでの配信が終わりそうな映画を見るシリーズとして、どんな映画か全く知らず、題名も聞いた事無く、粗筋も見たか見ないか位のほぼ前知識無しで見た映画だけれど、これが物凄くおもしろかった。

この映画の一番の特徴としては、本来の世界とエコーでの撮影や視点の映像が違い、本来の世界での時間的には過去に起こった事は普通の映画の第三者視点からの撮影で、エコーでは全て主人公の一人称視点。
ゲームで言えばFPS(ファースト・パーソン・シューティング)視点で、映画で言えばPOV(Point of View)ショットになっている。
多分、このFPS視点が評価を別ける所だと思うけれど、FPSのゲームをやった事あるとか、FPSのゲームを配信で見た事があってFPSのゲームが好きだと、この映画が楽しくて面白いはず。
わたしは、映画の序盤で主人公が敵に追われて民家に入った時、バールのような物を見つけて手に取った場面で「ああ、この映画ってそういう事か!」と気付いて、この映画が無茶苦茶楽しくなった。
そう、シングルプレイのFPSのゲームではバールこそ最強伝説があるとまことしやかに言われていて(三大FPSと言われている「ハーフライフ」の主人公ゴードン・フリーマンがバールを振り回す所から来ているらしい)、このバールを手に取る場面ではバールを手に取った後に敵が爆弾を投げ込んだので主人公はバールを投げ捨てて逃げ出してしまい、こんなバールを手に取って少し眺めるなんて場面は全く必要無いのにわざわざ入れている時点で、この監督は映画でFPSのゲームをしたいという事だと思ってしまった。
実際、この映画ではFPSのゲームっぽい演出が満載。

主人公は脳内にコンピューターが埋め込まれているらしく、イヤホンマイクの様な装置を付けると目の前に様々なインジケーターが現れる。

自分だけに見える映像を映画「マイノリティ・リポート」みたいに指で操作してコンピューターを操作したり、電話をかけたり、テレビの映像を見れたりする。

ミッション・ログ用の音声の録音がインジケーターに表示。

全体マップを広げて現在地点と目的地までの経路を表示。

目的地までの距離を表示したり、現在の時間が左下に常に表示(時間は主人公が度々失神して過去の映像が挿入されるので、時系列を分かり易くする映画的親切心の意味も)

無人ドローンに見つかるとインジケーターにセキュリティー・アラートが表示。

攻撃を受けると画面が赤くなって、医者に行けとかの治療を勧める。

攻撃を受けるとヘルメットやマスクを付けていないのに見ている映像に血飛沫が付いている。

致命的なダメージを受けると画面の周囲が黒くなり始め、視野が狭まる。

近くで爆発が起きると、耳がキーンとなって音が遠くなる。

結構な致命傷でも速攻で回復。

始めは逃げ惑うだけだが武器を手に入れて無人ドローンを攻撃する時に始めに入手する武器はハンドガン。

同じ格好をした敵が装備していた武器(サブマシンガン?アサルトライフル?)を手に入れて戦う。

物陰に隠れる時は敵目線だと絶対見つかりそうなのに気付かれずにスニーク出来るし、敵の弾が中々当たらない(AIが馬鹿)

飛行機が墜落しても何故か無事。

更には終盤に傭兵が付けているプロ仕様?のデバイスを装着すると、もうやりたい放題になり、インジケーターに自分のヒットポイントらしきモノが表示。

無人ドローンだけでなく車両の耐久値も表示。

撃っている銃の残弾数の表示。

敵の攻撃で撃たれると画面が赤くなって一瞬スローモーションになり、少し時間が経つと元の様に行動出来る。

まずは主人公が自動車を運転し仲間が荷台の機銃を撃っているが、仲間が怪我をして交代して走っている自動車の固定機銃を主人公が撃ちまくって敵を倒す。

等々、近年の何かのFPSのゲームで見た様な演出や展開がわんさか。
これにずっとニヤニヤしてしまった。

ただ、SF映画としてはこの設定や状況を作る為に結構意味不明だったり強引な部分も多い。

物質をエネルギーに変換出来るならエコー世界は必要無くて、本来の世界のゴミや廃材を燃料にすればゴミ問題も解決だし、足りなければ何処にでもある岩とか砂でもいいじゃん。

エコー世界を作り出すって相当というよりも、とんでもないエネルギーが必要なのでは?

コピーしたようなエコー世界に都合良く人間や有機体がいないって理論は何故?

エコー世界の物質を使ってエネルギーに変換して本来の世界でエネルギーを使えば、当然二つの世界のエネルギーバランスは崩れるだろ。

本来の世界からはエコー世界との接続を絶てないって何故?

運良くエコー世界の主人公は死んでいたけれど、生きていたらエコー世界から本来の世界にもう一人の主人公がやって来てエコー世界を救う為に本来の世界を破壊しようとして、結局両方の世界が破壊されていたかも?

等々、無理矢理この世界に収めた感じがして、この部分は変にこねくり回さなくてもよかった気ばかりした。

展開は、始まりから何がどうなっているのかが分からないまま進んで行き、エコーでの今の状況と本来の世界の過去を交互を見せて徐々にどうなっているのかが分かるのは引き付けられて良いし、序盤の訳の分からないまま無人の町を逃げ惑う部分はおもしろいけれど、墜落した飛行機の犠牲者を並べているとか、反対勢力のボスと対面したりとかの展開が結局何だかよく分からないし、いらない様な部分もあった。
これはこれで世界の背景を見せる為だったり、新規アイテム入手の為のイベントっぽかったり、新たに行ける場所の開放が目的の1イベントっぽかったけれど。

常に気になってしまったのは主人公の目線の低さ。
カメラの大きさとかカメラの撮影の位置なのか、それとも映画として映っている人の頭の上の余白と首から下の映りの構図を考えてなのか、一人称視点の映像だと主人公の背丈が皆よりも少し低く見える。
調べてみたらダン・スティーヴンスって身長180cm台だったけれど、アビゲイル・ヴォス役のベレニス・マーロウが170cm台前半なのに、それよりも背が低い感じに見えた。

あと、ちょっとおもしろかったのは予告編。
映画本編は時系列が行ったり来たりで、あえて分かり難く作ってあるけれど、予告編は分かり易さを出さないといけないという事か結構時系列順に並べて作ってあって、映画を見た後から予告編を見た事もあるのだけれど予告編を見ると非常に話が分かり易くなっている。

この映画、映画としては微妙なのかもしれないけれど、SFモノのFPSのゲームの実写映画として見てしまい、それが好きなので物凄くはまってしまって無茶苦茶おもしろかった。
FPSゲームのあるある映画としてみたら物凄く楽しいし、下手すると実際のゲームだと値段相応に遊べるように作っているのでゲーム的なパズルの謎解きとか、あっちこっち行ってアイテム集めないと次に進めないとかで数十時間はかかって、ゲームをプレイしたりゲーム実況を見ていても結構ダレたり飽きたりする事もあるのを考えると、長時間のゲームプレイやゲーム実況を見る代わりとしてのこの映画もありかもしれない。
序盤の町での場面を見ていて、この実写レベルの綺麗さで謎解きとか、家々に入ってアイテム探しのオープンワールドのゲームをしてみたいと思ってしまった。

☆☆☆☆★

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