アメリカではアメコミよりも日本の漫画の方が売れている訳ではない話

2020年08月10日 月曜日

何だか最近話題になっているらしいのが、「最近アメリカではアメコミよりも日本の漫画の方が売れている」という話。
どうやらコミックスゲートやら、ポリコレに関係しているみたいだけど、そこら辺は良く知らないので単にアメリカのコミックス市場について調べてみた結果。

フォーズスの2019年10月の記事「Surprising New Data Shows Comic Readers Are Leaving Superheroes Behind(https://www.forbes.com/sites/robsalkowitz/2019/10/08/surprising-new-data-shows-comic-readers-are-leaving-superheroes-behind/)」では、2018年のアメリカとカナダを合わせた北米のコミックス市場全体が10億950万ドル。
書店での売上が4億6500万ドル。
ダイレクト・マーケットでの売上が5億1000万ドル。
(このダイレクト・マーケットと言うのは、コミックショップが買い取り・返本なしで取次店のダイヤモンド・コミック・ディストリビューターズから直接仕入れる流通)

で、市場の半分位の規模である書店での販売のシェアが、6~18以上向けの子供向けコミックス(JUVENILE FICTION)が41%。
日本の漫画が28%。
スーパーヒーローモノが10%。
その他子供向けノンフィクションとか、ファンタジー・SF等が数%という割合。

市場のもう半分のダイレクト・マーケットのシェアに関してはマーベル・コミックスとDCコミックスで80%を占めていると書かれているけれど、それ以外の詳しい割合は無し。

フォーズスの記事の元ネタとなっている情報を出しているComichronのサイトの2018年の記事「2018 Comic Book Sales to Comics Shops(https://www.comichron.com/monthlycomicssales/2018.html)」では、北米でのダイヤモンド・コミック・ディストリビューターズによるダイレクト・マーケットでの売上が5億1659万ドル(何故か情報元は同じはずなのに、フォーズスの記事では$510Mで、こちらでは$516.59 Millionと微妙に違うのが気になる。フォーズスの方は四捨五入でもなく、一番下の桁を切り捨てているのは何故?)

Comichronの記事ではマーベル・コミックスとDCコミックスを合わせたシェアだと、冊数基準だと74.22%。金額基準だと68.28%。
日本の漫画の翻訳出版の最大手ビズ・メディアは冊数基準だと0.46%。金額基準だと1.22%。

なので、書店とダイレクト・マーケットを合わせたコミックス市場全体のシェアとなると、大まかに、適当な計算で、スーパーヒーローモノが40~50%。
その他のコミックスが30%位。
日本の漫画が15%位じゃないかと思う。

 
 
フォーズスの記事だけでも単純に計算すると、スーパーヒーローモノの売上は4億5450万ドル
(書店:4億6500万ドル×10%=4650万ドル + ダイレクト・マーケット:5億1000万ドル×マーベルとDCのシェア80%=4億800万ドル)

日本の漫画は書店の4億6500万ドル×28%=1億3020万ドルに、ダイレクト・マーケットのシェアがはっきりしないけれどComichronからだと数%なので、1億5~8千万ドル。

それ以外のコミックスは書店の4億6500万ドル×41%=1億9065万ドルに、こちらもダイレクト・マーケットのシェアがはっきりしないけれど数%足せば、2億数千万ドル。

やっぱり、北米のコミックス市場ではアメコミが70~80%で、日本の漫画は20%行かない位のシェアだと思うのだけれど。
 
 
しかし、一方でフォーズスの記事では、2017・2018年の2年間で子供向けコミックスはコミックショップでは20%増。書店でも39%増。
日本の漫画はコミックショップでは41%増。書店では5%増。
スーパーヒーローモノのグラフィック・ノベル(所謂TPB。シングル・イシューじゃない方)はコミックショップでは15%減。書店でも10%減と、スーパーヒーローモノのグラフィック・ノベルの売り上げは少し落ちて来ているよう。

ただこの記事では書店でのグラフィック・ノベルの売上以外のダイレクト・マーケットでのシングル・イシューに関しては書いておらず、Comichronのここ数十年の売上をまとめた記事「Comic Book Sales by Year(https://www.comichron.com/yearlycomicssales.html)」では、2019年のダイレクト・マーケットの売上は5億2811万ドルと伸びているので、フォーズスの記事ではTPB買う人が減っているとしか分からない感じ。

ちなみに、上記のグラフィック・ノベルだの、TPBだの、シングル・イシューだの、書店とダイレクト・マーケットで売れている本の傾向が全然違うという事の説明。
アメコミのスーパーヒーローモノは基本的に毎月1冊32ページ位の本に1タイトルだけの形式で販売されており、この本をコミックス、もしくはこの形態を指す為にシングル・イシューやフロッピーと言ったりしてます(所謂日本独自に言っているリーフ)

このシングル・イシューを数巻分収録した単行本がTPB(トレード・ペーパー・バック)で、このTPBをグラフィック・ノベルとも呼んでおり(元々は1冊のオリジナル本の事だったはず)、日本の漫画の英語翻訳版も単行本形式で売られているのでグラフィック・ノベルで、他のアメコミもグラフィック・ノベル形式で、ジャンルで分ける時にはグラフィック・ノベルとシングル・イシューは別になってます。

別になっているのは書店とダイレクト・マーケットで流通が違うので、書店は書籍であるグラフィック・ノベルを扱い、シングル・イシューはダイレクト・マーケットの扱いなので書店では扱わず、売上等の数字を出す大元が違うからだと思われます。

で、スーパーヒーローモノを読む人はダイレクト・マーケットのコミックショップでシングル・イシューを毎月買い、買って読めば単行本は必要無いので書店でグラフィック・ノベルは買わないので、書店でスーパーヒーローモノが売れないという状況。
 
 
付け加えて、各ジャンルの本が実際何冊位売れているかと言う話も。

Comichronの「2019 Comic Book Sales to Comics Shops(https://www.comichron.com/monthlycomicssales/2019.html)」によると、2019年のダイレクト・マーケットのシングル・イシューではバットマンの「Detective Comics」の#1000が出版され、57万4705冊で1位。

ダイレクト・マーケットのその他のジャンルだと、「Saga Vol. 1」が1万8723冊でグラフィック・ノベル部門の2位。

ダイレクト・マーケットの日本の漫画だと、「僕のヒーローアカデミア」の1巻目(My Hero Academia Vol. 1)が1万424冊でグラフィック・ノベル部門の25位。

書店の方だと、「Tilting at Windmills #281 – Looking at BookScan: 2019(https://www.comicsbeat.com/bookscan-2019-analysis/)」によると、子供向けコミックスの分類になる「Dog Man: For Whom the Ball Rolls」が109万5532冊で1位。

「僕のヒーローアカデミア」の1巻目(My Hero Academia Vol. 1)が9万8720冊で20位。

スーパーヒーローモノだと「ウォッチメン」が37位に入っているけれど冊数は不明。

「ドッグ・マン」が凄い売れているけれど、比較するとなるとどう比較するかが結構難しく、「ドッグ・マン」はシリーズものではあるけれどこれ1冊が1話に近い感じ。
「僕のヒーローアカデミア」は週刊の1話を数話分集めた単行本だし、「Detective Comics #1000」はこれが1話で日本の漫画雑誌の1話分に近いしで、この3冊で比較していいのかしらん。
しかも、「Detective Comics #1000」は57万冊も売れたけれど、これは#1000だからという理由が強く、この#1000前後では1巻辺り5~6万冊程度。
1年分の「Detective Comics」の冊数を合わせると100万冊行くので、冊数的にも比較するなら「ドッグ・マン」1冊と「Detective Comics」1年分なのか?とも思ったりもしてしまうし、シングル・イシューとグラフィック・ノベルと更に日本の漫画の単行本だと形態が違い過ぎて比較してもいいのか諭になってしまう。

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