ブリッジ・オブ・スパイ
2019年04月04日 木曜日スティーヴン・スピルバーグ製作・監督、トム・ハンクス主演の2015年のアメリカ映画「ブリッジ・オブ・スパイ(Bridge of Spies)」。
実在の人物ジェームズ・ドノヴァンが関わった事件やジェームズ・ドノヴァンが書いた小説「Strangers on a Bridge」を基に作られた映画。
冷戦の緊張が高まっていた1957年。
保険関連の弁護士だったジェームズ・ドノヴァンはアメリカで逮捕されたソ連のスパイのルドルフ・アベルの弁護を担当する事になった。
初めからルドルフ・アベルの有罪は決まっていた様な物だったが、ジェームズ・ドノヴァンは将来起こり得るかもしれないソ連に捕まったアメリカ人捕虜との交換を指摘し、ルドルフ・アベルの死刑を懲役刑にする事が出来た。
すると間もなく、ジェームズ・ドノヴァンの考えが実際に起こり、ソ連領域を秘密裏に偵察していた飛行機が撃墜されてパイロットはソ連に捉えられた。
ジェームズ・ドノヴァンの元に東ドイツからの手紙が届き、その手紙はソ連がパイロットとルドルフ・アベルの交換を示唆する内容で、ジェームズ・ドノヴァンはCIAと共に捕虜の交換を計画するが、更に東ドイツに留学していたアメリカ人学生がスパイ容疑で逮捕された事を知り、その学生も助けようと奔走し始める。
前半部分のルドルフ・アベルの裁判は少々退屈だったけれど、中盤からのジェームズ・ドノヴァンの交渉が抜群におもしろかった。
ルドルフ・アベルの裁判はここでのジェームズ・ドノヴァンの裁判の進め方やルドルフ・アベルとの会話で、ジェームズ・ドノヴァンがどういった人物で、どうしてルドルフ・アベルにそこまで気持ちが入るのかとかを描くのかと思ったらそうでもなく、人物描写や関係性の描きが結構薄い。
何でここまでこの裁判に入れ込むのかは、自分がアメリカ人で憲法を信じているからなんだろうけれど、これがいまいちピンと来なかった。
ジェームズ・ドノヴァンって法律事務所の共同経営者で、見ていると元々は犯罪訴訟をしていたけれど今は保険関係の大きな企業の訴訟をしているらしい結構なやり手っぽいのに、初めから負ける様な裁判を受け、しかもアメリカ中から非難が起こるであろう事も分かっていたのに何で引き受けたかがよく分からず、見ていても理由はトム・ハンクスだからの良い人だからで押し切ってしまった様な印象。
ルドルフ・アベルとの関係も、二人の面会や裁判に挑む為の準備がそれ程描かれないので、ジェームズ・ドノヴァンの入れ込み様がピンと来ないまま。
なので、何でジェームズ・ドノヴァンは自分の弁護士人生や家族の安全まで犠牲にして頑張っているのかが分からず、いまいち乗り切れず。
ただ、ルドルフ・アベルとの捕虜の交換話になってからは個人の話から対立する国家の下で動く人間達との交渉戦になり、誰が本気なのか、どうすれば二人が帰って来るのかのサスペンスで非常に緊迫感があって見入った。
この東側の人間の思惑と国家の体面の中で右往左往しながらも二人を連れ戻すという信念で動くジェームズ・ドノヴァンが良い。
おもしろいんだけれど、この時のジェームズ・ドノヴァンも何でそこまで学生に拘るのか?は、裁判で助手だった弁護士と同い年だからと理由付けが弱いので、やっぱりジェームズ・ドノヴァンの執念にピンと来ず。
助手だった弁護士って前半で登場したけれど何か重要な役回りでもなく、しかも登場したのはニ三度なのでほぼ存在感無しなので、元々弱い役を活かすような描きもしないで理由にするってどうなの?
やっぱりこのジェームズ・ドノヴァンの執念の理由もトム・ハンクスだからで良い人だからに頼り過ぎな気がした。
中々おもしろく終わったら、最後に字幕で各登場自体達のその後を説明するのだけれど、それが物凄く気になった。
ジェームズ・ドノヴァンはキューバとの交渉で何千人もの捕虜を解放したとか、もうこの映画の続編、「2」じゃん。
ソ連の次はキューバと交渉して成功したとか、本当に映画のヒーローみたいな人。
逆に交換されたアメリカ軍のパイロットがその後ヘリコプターで墜落死って、何か陰謀を感じてしまう。
あと、事実を題材にした映画って、実際との違いや脚色がどうしても気になるので調べてみたら、映画では裁判と同時進行で飛行機での偵察や墜落が描かれ、更にそこに留学生の逮捕も加わって、余りに同時期で上手過ぎると思ったら、実際には裁判は1957年。飛行機の墜落は1960年。留学生の逮捕は1961年。捕虜の交換は1962年と結構時間が空いている。
緊迫して次々とやって来る展開にしないといけないのは分かるけれど、映画を見ていると数日か数週間の出来事にしか見えなかった。
こういう事実を知ってしまうと、結局映画よりもドキュメントの方がおもしろいんじゃないの?と思ってしまう。
この映画、ジェームズ・ドノヴァンとルドルフ・アベルの考えや関係性の描きが足りないので行動原理が見えて来ず、そこが乗っていけなかった。
中盤からの交渉劇がおもしろかっただけに、前半もうちょっとどうにかならんかったのかなぁ…?と思ってしまう映画だった。
☆☆☆★★