マーベル インヒューマンズ
2018年04月02日 月曜日アメリカでは2017年にABCで放送されたテレビドラマ「マーベル インヒューマンズ(Inhumans)」。
日本ではDlifeで2018年3月から放送開始。
マーベル・シネマティック・ユニバースのドラマで、元々は映画として企画されていたのが、1・2話目はIMAXシアターでの公開後、テレビで1話から放送された特殊な形態。
インヒューマンズという種族は同じABCで放送されているマーベル・シネマティック・ユニバースのドラマ「エージェント・オブ・シールド」で登場し、「エージェント・オブ・シールド」のシーズン4終了後にこの「インヒューマンズ」が開始されており、一応「エージェント・オブ・シールド」のスピンオフという扱いになるのかしらん?
数千年前に宇宙種族のクリー人の一部が地球で自分達の兵士を作り出す目的で地球人を遺伝子改造し、特殊能力を持つ種族が誕生した。
その遺伝子を持った人類はインヒューマンズと呼ばれ、現代でもその遺伝子を持ったインヒューマンズ達の子孫が後天的に特殊能力を持つ可能性を与えるテリジェン・クリスタルによって特殊能力が発現し始めていた(「エージェント・オブ・シールド」での出来事)
遥か昔に安住の地を求めて月の裏側に移住したインヒューマンズ達はアティランという都市で地球人達から隠れて暮らしていた。
アティランではインヒューマンズの王ブラックボルトを頂点としたロイヤルファミリーが支配していたが、土地が狭かった為にテリジェン・クリスタルから出るテリジェン・ミストを浴びても能力が発現しない国民を地下で労働させていた。
ブラックボルトの弟マクシマスも能力が発現せず、ブラックボルトの消極的な統治に不満を抱き反乱を起こした。
ロイヤルファミリー達は地球へと逃げ延びたがマクシマスは追手を差し向けていた。
コミックスのインヒューマンズはわたしもよく分かっていない三軍・四軍的マイナー種族で、特殊な能力を持ったチームと言えば、先天的ならX-MEN。後天的ならファンタスティック・フォーという、マーベルの一軍のメジャーチームがいるのだけれど、実写映画ではマーベルでもこのX-MENとファンタスティック・フォーを扱えないという事情がある。
現在はマーベル・スタジオズが先導してアベンジャーズ系映画のマーベル・シネマティック・ユニバースを絶好調で展開させているけれど、まだマーベル・スタジオズが無かった昔にX-MENやファンタスティック・フォーの映像化権を売り出し、それを結局購入したのが20世紀フォックスで、20世紀フォックスが製作してシリーズ化。
そのためマーベルであってもX-MENとファンタスティック・フォーはマーベル・シネマティック・ユニバースには登場させられないという状況に陥ってしまった(2018年にマーベルの親会社のディズニーが20世紀フォックスを買収するという一大事が起きて、今後のX-MENとファンタスティック・フォーがどうなるかは分からない事態になっている)
で、X-MENとファンタスティック・フォーが使えないマーベルが取った行動が、インヒューマンズをX-MENとファンタスティック・フォーの替わりに使っちゃおうという戦略。
「エージェント・オブ・シールド」は元々ヒドラとの戦いだったのが、シーズン2から出て来たインヒューマンズが物語の中心となり、それも今まで宇宙人はいるけれど超能力等は無いという方向性から舵を切り、インヒューマンズをABC系のドラマの中心に置いた。
更に内容的にもインヒューマンズ達は突然発現した特殊能力を制御出来ずに危険な存在なので保護するべきだ!の云々かんぬんはX-MENだし、インヒューマンズを作り出したクリー人とかの宇宙系の話も導入出来るのでファンタスティック・フォーの替わりになるしで、突然今までにない日の目を浴び始めたインヒューマンズ。
その突如ABC系ドラマの主役級を背負わされたインヒューマンズの、ブラックボルトを中心とするコミックスでの本来のインヒューマンズ達を扱ったドラマなんだけれど、これが「エージェント・オブ・シールド」みたいに「つまらない!」といきり立つ程でもなく、ダラダラと興味無い話が続くだけのおもしろくはないドラマになってしまっている。
このドラマの一番の問題は、話の主人公となるロイヤルファミリー達は本来なら視聴者が共感したり、応援出来る様なヒーローや追われる者として描かないといけないのに、見ていても悪者にしか思えず、話の中心となるには非常に弱い事。
そもそも描きたい善悪の対立の構図が完全に逆転しているという、何を考えて作ったのか分からない設定。
月面の都市の土地が狭いのでロイヤルファミリーを頂点とする支配者層は特殊な能力を持たない人々を地下で強制労働させ、能力を持つ者が多数を支配し、ほんの数人のロイヤルファミリーが全権力を握っているという完全な身分社会・階層社会で、その社会を維持したいのかどうかも分からない、ただ黙って待っている王ブラックボルトと、元々は下層階級だった妻のメデューサやその妹のクリスタル等のロイヤルファミリー側と、インヒューマンズの王族なのに自分は特殊な能力が発現しなかった事で負い目を感じながら現状を打破する為に強引な方法ではあるけれども能力を持たない人々を解放しようとしているマクシマスという対比を描いてしまったら、感情移入したり、良いモンに感じてしまうのはマクシマスの方じゃん。
マーベル・シネマティック・ユニバースでは現実の世界よりも遥かに科学技術が進んでいる中で、それよりも高い科学技術を持っている様子のインヒューマンズが領土も広げられない間抜けさもあるけれど、民主主義の現代国家に慣れた視聴者側から見たら、職業選択の無い身分社会を黙るだけで維持しようとするブラックボルトはヒーローには見えないでしょ。
ただ、マクシマスもとにかく敵は殺せ!という、まあ典型的でしかない古臭い悪役の単純なやり方しかせず、月面の土地が狭いので地球に侵攻して自分達の物にするんだ!というやり方なので、これまでの様々な物語に登場して来た安っぽい頭の悪い敵役になっているので、マクシマスも非常に微妙な人物になってしまっているのだけれど。
このロイヤルファミリー側とマクシマスが対立すれば、見ている方はまだ解放をしようとしているマクシマスに感情移入する訳で、何でこんな対立構造にしたのか、さっぱり分からない。
それに月面のインヒューマンズは1400人はいると言ってはいたけれど、画面上は全人口100~200人位にしか見えず、権力闘争しているのはブラックボルト側の五人とマクシマス側の数人なのでこじんまりしていて、インヒューマンズという種族の未来を左右する戦争には全く見えず、金持ち一家の家族喧嘩程度にしか見えず、見ていても、まあどうでもいい感じしかしない。
ロイヤルファミリーがハワイに逃亡してからもおもしろくはない。
ブラックボルトは地球人の文化を様子見して何も自ら行動はしないし、ブラックボルトを探そうとしているメデューサの話は退屈だし、ゴーゴンは何故かハワイ人と仲良くなり、そのハワイ人は元軍人で何故かゴーゴンの為に追手と戦う都合が良過ぎるだけの展開だし、カルナクと大麻を密造している人々との交流とかどうでもいいし、本当に見所が無い。
主人公のはずのブラックボルトは何をする訳でも無く、当然語る場面が少ないので主人公にはなっていないのもドラマを引っ張る力が無い原因になってしまっている。
ブラックボルトは結局アティランや国民をどうするつもりだったのか分からず、マクシマスが反乱を起こして失敗してアティランを破壊した事で国民は地球に来れたし、身分制度を解放出来たという漁夫の利を得ただけで、何もせずに制度を維持しようとしていただけの無能な王で終わってしまっていたし。
ブラックボルトは最後まで周りにやってもらうだけで、面倒臭い問題は放置しておくし、ここまで駄目な王として描いたのはどういう意図だったのだろう?
それに、インヒューマンズが主の登場人物なのに特殊な能力を使う場面が少ないのも、わざわざ自ら見せ場を減らしているという駄目さもある。
ブラックボルトは能力を使うのが1話目と最終話位しかなく、それもうっかり口を開けてしまい両親が消し飛んでしまうという馬鹿げた冗談みたいな回想場面と、弟マクシマスがアティランを破壊し、存在する事が危険だと言ってはみたものの、やっぱり弟なので殺せずに生き埋めにするために建物を破壊する位の全く能力を活かさない使い方。
メデューサも1話目で髪の毛を操れる能力を完全に封じてしまう丸刈りにするし、カルナクは行動を事前に検証出来る能力が頭を打った為に不完全になってしまい時々失敗するとか、何をしたいのかよく分かんない事ばかり。
このドラマは元々シーズン1は全8話なので全体の構成としてはロイヤルファミリーが逃亡して態勢を立て直して月に戻ってマクシマスと対決し、その月のインヒューマンズを巻き込んでの権力闘争が中心になるのものだとばかり思っていたら、全8話なのに6話目までハワイでブラックボルトを探してロイヤルファミリーが中々出会えないということを延々とやっていて、退屈過ぎる。
これ連続ドラマにする必要無くて、それこそ初めの計画通りに二時間位の映画にするか、二時間のスペシャルドラマで良かったと思える程、企画を水増しに水増した感ばかりで中身がスッカスカ。
アメリカでも相当数字が悪かったようで、映画としてのIMAXでの公開はアメリカでも一週間程しかなかったようだけれど、興行収入はアメリカ国内で152万ドル。全世界でも285万ドル。
視聴者数も1話目から558万人で、「エージェント・オブ・シールド」のシーズン3程度。
結局中盤からは300万人程度で、録画等を除いたテレビでの放送を見ていた視聴者数は200万人を越えなかった回が三回もありと散々な結果。
この内容じゃあ当然と言えば当然な出来ではあるけれど、結局このドラマは正式に打ち切りになったのかな?と調べてみても、正式なキャンセルにはなっていないよう。
「エージェント・オブ・シールド」にしろ、「エージェント・カーター」にしろ、同じABCのマーベル・シネマティック・ユニバースのドラマは初めは結構おもしろく進むのに、進めば進む程ドンドンとつまらなくなり、それが見事に数字にも表れたけれど、この「インヒューマンズ」は更に進化して初めからおもしろくもなく、数字も良くなくで、マーベル・シネマティック・ユニバースの映画は回を重ねる毎に順調に行っているのとは反対にあるABCのマーベル・シネマティック・ユニバースのドラマの駄目さ加減って、何が原因なんだろう…?
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