ツーリスト
2016年12月22日 木曜日フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督・脚本、ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリー共演の2010年のアメリカ映画「ツーリスト(The Tourist)」。
2005年のフランス映画「アントニー・ジマー(Anthony Zimmer)」のリメイク映画。
イギリスで大規模な税金未納で指名手配されているアレクサンダー・ピアースの彼女でインターポールから監視されているエリーズ・クリフトン・ウォードはアレクサンダー・ピアースの指示でヴェネチア行きの列車に乗った。
アレクサンダー・ピアースの指示では自分と姿の似た男を見付けて行動しろと書かれていたので、偶然にいたアメリカの数学教師フランク・トゥーペロと同席する。
二人はヴェネチアに着き、エリーズ・クリフトン・ウォードがフランク・トゥーペロを誘った事によってフランク・トゥーペロがアレクサンダー・ピアースと間違えられて命を狙われてしまう。
ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリー共演という話題性がある映画だけれど、内容的には酷くおもしろくなく、ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリー共演という話題性しかない映画。
この二人が登場する映画となればアンジェリーナ・ジョリーがジョニー・デップと出会う前から、アンジェリーナ・ジョリーがジョニー・デップと出会い、ジョニー・デップがアレクサンダー・ピアースに間違えられる展開でしょ…と分かってしまう上に、ジョニー・デップと出会った時点で本当はジョニー・デップがアレクサンダー・ピアースじゃないの?と思ってしまう程分かり易いミスリードになってしまい、ただそれが全然ミスリードにもならず、真っ直ぐそのままな落ちしかないという見え見えな脚本という、まあ脚本もだけれど配役が大きな間違いになってしまっている。
そもそも普通の数学教師が、物凄い金持ちで非常に良い女というバリバリに記号化されたアンジェリーナ・ジョリーと出会い、何でヒョイヒョイ付いて行くのが分からず、よっぽど自分の顔に自信がある男前のプレイボーイか、でなければ「彼」だからだよなぁ…という、これまた見え見えな展開。
まだ、ジョニー・デップが何だか分からない内に巻き込まれて度重なる敵からの攻撃を何とかかわして行くという展開ならそこも気にせず見れるのに、この映画終始まったりと二人の関係を描くのだからサスペンスとしても駄目。
序盤も特に何も起こらず、ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーのグダグダした恋愛劇なのか何なのか分からない話が続くだけで、ジョニー・デップが攻撃されるのもほぼ一回位で、その後は見せ場も無いままダラダラ続くし。
演出も酷く、ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーの好きに至るまでの心情はどちらも全然見えて来ないし、結局何で二人はそう行動するの?というのも「アレクサンダー・ピアースだから」という前提があるだけで、その場やそこまでの心情等々の描きのお座なり感は半端無い。
特に音楽の演出が酷く、良い雰囲気になったら良い雰囲気ですよ!と押し付ける様な音楽。緊迫する場面は緊迫した音楽等々、音楽の使い方が非常に安っぽい。台詞で心情等も全部説明した上に音楽でも「ここは感動する所ですよ!」と分かりやす過ぎる程の過剰なお節介を見せる最近の日本の安っぽいテレビドラマ並み。
ジョニー・デップは普通の人をキチンと演じているとは言え、アンジェリーナ・ジョリーが惚れる魅力ある男性という役の時点で配役としてジョニー・デップは間違いだろう。普通の人という設定なのにジョニー・デップだと単に男前だからアンジェリーナ・ジョリーが惚れてるんでしょ…となり、普通の人という役柄が何の役にもたっていない。
アンジェリーナ・ジョリーは金持ちで良い女というアイコンとしては立ってはいるけれど、逆にジョニー・デップが何で惚れるかが分からない女性ではある。単に金持っている良い女風の女性だから以上がなく、何が魅力的なんだかさっぱり分からない。それに結構顔が痩せていて、しかも目の周りを真っ黒に塗る化粧なので、時々顔面が怖かったし。
この映画、話は意外性の無い、そのままの落ちしかない上に、一つの話を水で薄めまくって引き伸ばし、見終わると特に見るべき展開も無いままだった…で終わってしまう非常に薄々でスカスカな映画。逆にこれだけしかない内容でよく一時間40分も作れたなという感じ。ヴェネチアが舞台でやたらと町並みを見せる様な場面が多いけれど、ヴェネチア観光映画にすらなっていなかったし。
この映画がおもしろいのは、何故か2011年のゴールデングローブ賞にミュージカル・コメディ部門で作品賞、主演男優賞、主演女優賞にノミネートされている事。ゴールデングローブ賞はこの映画いじりまくりだな。
☆★★★★