なにはなくとも全員集合!!

2016年07月10日 日曜日

渡辺祐介監督・脚本、三木のり平主演の1967年の映画「なにはなくとも全員集合!!」。

草津の町に新たにバス路線が開通しようとしていた。一方で草津の鉄道駅には新たな駅長が赴任し、バス会社と駅職員達の小競り合いが始まった。

これザ・ドリフターズの初主演映画とはなっているものの、主役は新たにやって来た駅長である三木のり平で、ドリフの面々は完全に脇役。
話も駅長が中心で、駅長の娘の恋愛話もあるけれど、その娘の相手役もドリフメンバーではなく古今亭志ん朝
ドリフメンバーは駅員とバス会社の社員と旅館の番頭役で、別にドリフでなくとも良い役ばかり。
何でこれでザ・ドリフターズ初主演映画なのかはさっぱり分からない。

話もバス会社と鉄道との対立に翻弄され、そこに娘がバス会社の人間とくっ付いてしまう所謂人情喜劇なんだろうけれど、温い喜劇で笑い所が全然無い。
この主軸の駅長の話に所々でドリフメンバーがドタバタするのだけれど、それもこの後の「8時だョ!全員集合」的なドリフではない大人しいコメディなので面白さが少なく、「初期のドリフって、こんな感じだったのかぁ…」という興味でしか見れない。

映画自体はつまらないけれど、この時代の感覚や登場する人々の今とこの時の比較が物凄くおもしろい。
話の軸となっている「電車が落ち目で、バスがイケイケ」と言うのは、今のバス路線が次々と廃止されていたり、本数がドンドン減らされているという「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」で頻繁に出て来る現実からだと全然ピンと来ず、「こういう時代もあったのか…」という興味で見てしまう。
登場する人達はまだ存命の人もいるけれど、流石に50年近くも前の時代となると現在は見なくなってしまった物も沢山。駅長の家での生活なんて、最早日本でもほぼ無いし。

出ている人達も当然若く、知っている最近とは別人の様。
ドリフメンバーも皆若い。
いかりや長介はまだ三十代、36歳なのに老け過ぎだし、歳を取ってからの優しい感じも無く、ギスギスした怖さがある。

加藤茶は24歳で若い。おもしろよりもちょっとカッコ良い顔してる。でも、あの変な訛りとこの後の顔芸や動きと言い、良く見た加トちゃん。しかし、この映画の雰囲気の中ではしつこさやわざとらしさで浮いている感じはある。
何かジャルジャルの後藤淳平が似ている感じ。

バラエティ番組で見る高木ブーは、「喋らない。動かない。」だけれど、この映画では太った人の良いおじさんといった感じで喋るし、動くしで、見慣れないブーさんに不思議な感じがした。

仲本工事も若く、おぼこい可愛さがある。でも、やっぱり目立った役じゃあない。

この時代はまだ志村けんはおらず、荒井注時代。荒井注もいまいち目立たず、「なんだ、バカヤロー!」とかも言わず。
見た目はグランジの佐藤大が似ている。

古今亭志ん朝も若い。歳を取ってからの落語家しか知らないので、この若くて役者をしている時代は知らなんだ。

中尾ミエも若いけれど、この後の中尾ミエの印象が強くて、どうにも中尾ミエが綺麗所のヒロインというのが全然しっくり来ない。

この映画、ザ・ドリフターズの初主演映画と謳っているのでドリフのドタバタコメディを期待して見たので大外れ。三木のり平の人情喜劇じゃん。それもおもしろくはなく、完全にこの時代と現在のとの様々な差異やまだ初期の新生ザ・ドリフターズをこの後と比較して見るという映画になってしまっている。

☆☆★★★

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