ファーゴ

2014年12月07日 日曜日

ジョエル・コーエン監督・脚本、イーサン・コーエン製作・脚本、ウィリアム・H・メイシー出演の1996年の映画「ファーゴ(Fargo)」。
冒頭に「実話」と出て来るが、これは嘘っぱちで、完全なフェイクション。

会社の金に手を付けたのか、金に困っていたジェリー・ランディガードは自分の妻を誘拐させ、義父から身代金を取り、犯人達と分け合う計画を実行しようとしていた。

この映画、終始不思議な雰囲気が漂い、まったりと進むけれどジッと見入ってしまう。
おどおどしたウィリアム・H・メイシーが抜けた感じのスティーヴ・ブシェミに狂言誘拐を持ち掛ける始まりからしてコメディになるとしか思えないのだけれど、話が進むにつれ結構陰惨な犯罪モノになって行き、それなのに所々で決して大笑いしない、クスッとさせる様な微妙な笑いを仕込んで来るのだから、最後まで掴み所の無いままの雰囲気。始まりに「実話」と出て来たからそれを信じて見てしまっていたので、「陰惨な所で、何で急に薄い笑いを挟み込むんだろう?」と終始モヤモヤ。嘘っぱちと分かった後はブラック・コメディだとは分かるけれど、安易な狂言誘拐が大量殺人へと転がって行き、幸せを再確認する警官を出して非常に教訓的な話にしているのでブラック・コメディにしては弱いし、笑いは薄いし、見終わっても非常に評価し難い。でも、この雰囲気や構成、演出や編集は好きな感じ。にしても、あの少々変なヤナギタさんとの話とか、息子の部屋のアコーディオン・キングとか、笑わそうとするには変な所に挟んで来るし、何なんなのだろう?

掴み所の無い演出ではあるけれど、各登場人物は非常に濃く、バンバン前に出て来る。ウィリアム・H・メイシーは基本的には良い人なんだろうけれど、何かしらの悩みを抱え、それを表に出さない役をさせたら上手い。
一方のもう一人の主人公であるフランシス・マクドーマンドも、この飄々とした感じが良く、アカデミー賞で主演女優賞を取ったのも分かる。
スティーヴ・ブシェミはお喋り野郎で、彼の得意な役で、こういう役やらせたら流石にはまる。
その他にも、「プリズン・ブレイク」のジョン・アブルッチ役でお馴染みピーター・ストーメアは、髪の毛金髪で無口で、見た目も役もまるで犯人役をやる時のブルース・ウィリスみたい。

この映画、まったりとした雰囲気でも引き込まれたし、転がり落ちて行く展開も中々おもしろかったけれど、この映画の前知識があるとないとでは相当感じ方が違うはず。わたしは「コーエン兄弟」という名前だけで何も知らずに見たら、「陰惨なのに、何この微妙な笑かしは…?」と終始変な気分。フィクションだと知っていたら、一つ一つの場面や演出にブラック・コメディとしてニヤニヤ出来たのだろうなぁ…とは思う。見終わると「実話」と信じていたら納得の持って行き方なんだけれど、フィクションだとしたら「緩過ぎないか?」と思ってはしまう。

☆☆☆★★

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