ステルス

2014年11月18日 火曜日

ロブ・コーエン監督、ジョシュ・ルーカス主演の2005年の映画「ステルス(Stealth)」。

最新のステルス戦闘機を操縦する三人組に、新たに一機戦闘機が追加されると知らされる。その新型機は人工知能を搭載した無人戦闘機だった。しかし、当然その人工知能が暴走してしまい、高額最新兵器をどうするかでもめる事になる。

ロブ・コーエンが監督という時点で、派手だけれど中身はスカスカして取り留めも無い話になるだろうとは分かってはいたけれど、中々酷い映画だった。
特に脚本はグダグダ。話の主題である人工知能を搭載した戦闘機が登場した時点で、安っぽいSFのお約束である命令を無視して暴走する事は分かり切っているにも関わらず、実際にその話になるのは50分も過ぎた辺りと遅過ぎ。暴走したにも関わらず、説得と言う機械相手に馬鹿みたいな解決法で人工知能を支配下に置いてしまう。この暴走の原因が落雷が当たっておかしくなり、感情を持ってしまうという子供が書いたかの様な稚拙な原因で、しかも説得後は物凄く大人しく主人公に従うという今までは何だったのか?と思ってしまう急激な変化。そもそも上層部が判断すべき事までを考えてしまう様なトンデモない人工知能を戦闘機に入れる意味も分からないし、凄い機動力と破壊力を持った兵器に対して全然安全策を講じていない馬鹿過ぎる開発者や管制側等、見ていても人工知能の戦闘機ありきで作っている設定の緩さも酷いモノ。最後も無人戦闘機があれだけ「敵に情報は渡せないから不時着出来ない」と言って暴走したにも関わらず、自分の身を挺して人間を助けるという変なお涙頂戴に走ってしまい、人工知能の頭の悪さと言うより、脚本の頭の悪さばかりが目立ってしまう。
他にも、始めの実践はどの場所にテロリストが集まるとか分かっているのに、現場に捜査官とか偵察とか送り込んでいない時点で「何しているの?」なんだけれど、密集した市街地に戦闘機飛ばして「攻撃すると民間人が巻き添えになってしまう!」って当たり前な頭悪過ぎる作戦行動に出てしまう。司令官である大佐はこれ以降もずっと頭が悪く、やる事成す事裏目にしか出ず、無駄に張り切った無人戦闘機とか、変な無謀な作戦とかは全てこの大佐が元凶で、馬鹿な上司の尻拭いをさせられている部下という間抜けな構図になってしまい、見ていても緊張感も無ければ面白味も無い。
戦闘機の損傷で墜落した先が上手い事北朝鮮だったり、ガンガンに領空侵犯したり、ロシアの戦闘機と交戦して、その後は北朝鮮で暴れまくったにも関わらず、めでたしめでたしという都合の良過ぎる展開にも全く身は入らない。

登場人物達に関しても、人工知能の暴走まで描かれる飛行士三人組の話は、ジェシカ・ビール演じる女性飛行士の話は薄くて、まるで軍での女性飛行士の立場位弱く、一方で結構描かれているジェイミー・フォックスは早々に退場してしまい後半は全く出て来ず、何で登場させたかも分からない存在。突然「休暇に行け!」と言われ、タイで三人が過ごしている場面が結構大目に描かれるにも関わらず大して人物像が深く描かれもせず、これが後々に響いても来ず、制作陣がタイで羽を伸ばす為に映画資金を使ったからの言い訳の様な場面は全く必要も無い。序盤は飛行士三人の群像劇っぽいのに、中盤以降は完全にジョシュ・ルーカスのヒーロー映画になってしまっていて、構成もグチャグチャしている。
そのジョシュ・ルーカスもやっている事と言えば、機械相手に必死になって対抗意識燃やしてみたり、必死に説得してみたりと、見ていても物凄くアホっぽいし。

一番の見せ場である戦闘機の空中戦も見難くて、見続けていると疲れて来る。人だけの場面でも手持ちカメラ的な揺れる映像で見難いのに、跳んでる戦闘機が遊園地の乗り物みたいな横揺れをしている上にカメラも揺らしているのでどこを注視すべきなのかも分からないし、高速で飛んでいる戦闘機の進行方向とは反対側にカメラを素早くパーンさせるので、戦闘機がどう飛んでいるのかも把握し難い。飛んでいる戦闘機を他の飛行機から撮っている様なカメラ位置なのに、突然コクピットの中に入り操縦者に一気に寄ったかと思ったら、そのまま戦闘機下部のミサイルに移動し跳んで行くミサイルを追い駆けるとか、場面の転換が激しく、しかも通常は有り得ない物体を突き抜ける映像の連続で今何がどうなっているのかの把握が追い着かなくなり、結局このカメラ位置の意図は?何視線?とか頭の中がグチャグチャして、ただ疲れるだけしまう。

人工知能を搭載した無人飛行機だけがSF要素の様に思われるけれど、それ以外の部分、特に新型の戦闘機も相当SF。相当高速で飛んでいるのに、飛行士は体を素早く動かして後方確認したり、座席に体を固定せず、ヘルメットも酸素マスクも無しで無人戦闘機に人が乗っても何とも無く、この世界ではすでに重力制御装置でも実用化されているのかと思える位無茶苦茶な兵器になっている。

この映画、2005年時点でもフランケンシュタイン・コンプレックスを戦闘機でしたから新しいだろう!という使い古された発想は擦られ過ぎて新鮮味は全然無かっただろうし、したい事をする為に無理矢理合わせて来た様な展開といい、人物描写に時間を割く割りに人物の誰もがペラペラ感しかなかったり、見せ場であるはずの空中戦が見難いだけと、企画・脚本・映像共にどうしようもない。

☆★★★★

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