ミッション・トゥ・マーズ
2014年09月21日 日曜日ブライアン・デ・パルマ監督、ゲイリー・シニーズ、ティム・ロビンス、ドン・チードル出演の2000年のSF映画「ミッション・トゥ・マーズ(Mission to Mars)」。
2020年、初めての火星への有人探査隊は謎の現象により被害を受け、乗組員にも死亡者が出る。第二次調査隊として計画されていた隊を救出隊として、彼らを助けに火星に向かう事となった。
この映画、始めは結構現実路線のハードSFで、非常におもしろい。
始まりは火星に向かう宇宙飛行士達の喜びや不安を描き、実際の宇宙空間や火星上での施設や行動も現実の延長線上のしっかりしたSFになっている。ちゃんと火星上と宇宙基地間の通信は数十分間のずれがあるし、助けに行く火星までの行程は急いでいても数ヶ月かかるし、人口重力も遠心力によるものだし、流星塵で船体に穴が開いて、小さな穴からの空気の流出が致命傷になりかねないとか、火星軌道上で旗船を捨てて別の船に乗り移るとか、ファンタジーしないキッチリとしたSFで一つ一つにニンマリと、楽しく見れる。
しかし、終盤になると突然ファンタジー化、古臭過ぎるSFになってしまい、折角のハードSFが台無しに。そもそも序盤に既に出て来たあの「火星の人面岩」を軸にした時点で怪しさは満天だったけれど、それが火星人の残した物で、しかも生命の地球外起源説とか出し始めて、それまでが近未来ハードSFとして良く出来ていた分だけにこの古臭さは酷さしか感じない。「火星の人面岩」って、1976年にバイキング1号が撮影した写真で、その時から散々「宇宙人がどうのこうの…」と言う話はあって、2000年の時点でも古過ぎるネタだし、しかも2001年にはマーズ・グローバル・サーベイヤーの撮影した高解像度の写真も出ているので、今見ると相当しょっぱい。しかも、岩の中から出て来る顔が写真の様な長方形ではなく、額が大きく、顎がとても細い顔で、全然違う。
それに良い所で、大事な所で突っ込みを入れてさせてしまい、覚める。ティム・ロビンスが火星に落ちて行く時、彼の妻が助けに行き、燃料が残り50%でそれ以上行けなくなってしまうけれど、この燃料の残りって元いた船から出発しているのだから、もっと燃料使っても別の船までは戻れるでしょう?と思うのだけれど。ティム・ロビンスの劇的な退場を狙い過ぎて無理したなら、助かっても良かったじゃないと思うのだけれど。
それと、あの火星の顔は正しい答えを出すと開くけれど、間違った答えだと攻撃して来るって、どんだけ攻撃的で破壊的な相手。「何も起こらなかった」で十分なのに。分かりやすいファンタジー的な展開を狙い過ぎていて、安っぽくなってしまっている。
主人公であるゲイリー・シニーズは、現在は「CSI:ニューヨーク」のマック・テイラーの力強い正義の信念の人の印象が強いけれど、それまでの映画の印象は「彼が出て来たら、彼が犯人」が多い中、この映画ではマック・テイラーの様な信念で突き進む良い人。しかも、奥さんを亡くし悩みを抱えた人物って、そこでもマック・テイラーみたい。
ティム・ロビンスやドン・チードルは非常に安定感があり、しかもちゃんと見せ場もある脇役で、なかなか良い。
この映画、下手に劇的な、ファンタジー的な「火星の人面岩」を入れなければ、ハードSF的なSF映画として相当良かった。今更「火星の人面岩」で一本映画を作ってしまい、しかも中途半端に最後だけ「2001年宇宙の旅」を狙ってしまったので、全てが台無しに。今更「火星の人面岩」でするのだったら、同じく1976年のバイキング1号が撮影した「スマイルマークのように見えるクレーターのガレ(Galle)」に行ってみたら、ヒッピー達がラリッて大騒ぎしていた位のしょうもないオチもありでしょ。
☆☆☆★★