新・平家物語
2012年05月15日 火曜日市川雷蔵主演の映画「新・平家物語」。
平家物語という題名なので確かに平安末期の貴族と武士の政治的話が主軸になってはいるけれど、平清盛がのし上がって行く話かと思ったらちょっと違う。平清盛の青年時代の出生の悩みだったり、恋愛や社会に対する悶々とした不満が中心の話で、そこら辺は家制度や通い婚等があった平安時代とは違い現代的に描かれ、その若い平清盛は良く描けているのだけれど、平家物語と言われると導入位の話なのでちょっと肩透かしを喰らう。それは何でかと思ったら、これは三部作の一作目で、この映画の後一年の間に「新・平家物語 義仲をめぐる三人の女」「新・平家物語 静と義経」と製作されていたからか。ただ続編は、監督も主演も違うし、平清盛の話でも無い様だ。それって三部作としてどうなのだろう?
この当時の武士は、貴族に良い様にされ、僧にはいちゃもん付けられで、まだ社会的地位が低く、彼ら自身も、面目丸潰れだから刀抜くとか、喧嘩売られたからやってやんよとか、まあチンピラと大して変わらない。しかし良く考えたら、貴族や僧侶が無茶して良い思いしているから、武力を持った軍人が力で社会を引っくり返そうとしている、嫌~な時代でもある。
流石日本映画黄金期の映画だけあって、美術は良く出来ている。外では、実際の寺の境内で市を開いて、それも奥の隅々まで良く作り込んであり、雑多な多くの人々を配置し、少し見切れる人皆きっちり普段の演技しているし、画面も雰囲気も奥行きが凄いある。また、平安時代の衣装や建物は見慣れた江戸の時代劇とは一風違い興味深いし、平安末期というのもあり結構寂れていたり、セットも抜群に良い。衣装も、何故か女性はチューブトップの様な物の上に着物羽織っていたり、妙に現代的。
ただ皆の喋り方が、平安時代の京都の人々なのに貴族でさえ江戸時代の武士風の喋りなので、違和感しかない。江戸風にするなら普通に現代劇の口調でも良かったと思うけれど。それに録音技術のせいなのか、何喋っているか聞き取り難いので、喋って聞き取った後0.何秒後に理解していたり、大声で叫ぶと全く何言っているかわからない状況で、疲れて来る。
この市川雷蔵は、前見た「若親分」とはまた違う、すっきりした顔の若武者で、役で全然違って見える。流石な役者。ただこの平清盛は、眉毛が物凄く濃いし、太いし、ピンと立っていて、漫画みたい。
またもや、市川雷蔵は良いなと思えるえいがだけれど、「平家物語」と銘打ってはいるけれど平清盛の若い時の短い一部分を切り取っただけなので、大河感は無く、逆に短い時期の話なので人物は良く描けているので、これで続編作れば良いのにと思える勿体無さ。
☆☆★★★