透明人間

2021年05月12日 水曜日

ジェイムズ・ホエール監督、クロード・レインズ主演の1933年のアメリカ映画「透明人間(The Invisible Man)」
H・G・ウェルズのSF小説「透明人間」が原作。

大雪の日、村の宿に一人の見知らぬ男がやって来た。
男は室内でも帽子やコートを取らず、顔には包帯が巻かれ、サングラスをつけており、宿屋の人間に放っておいて欲しいと告げた。
男は自分の研究で全身が透明になってしまったジャック・グリフィン博士で、透明から元に戻ろうと宿屋で研究を始めた。
しかし、謎の研究に興味を持った宿屋の人間に詰め寄られたジャック・グリフィンは包帯を取って透明人間の正体を明かし、次々と村の人々を襲って殺し始め、町中が大騒ぎとなる。
ジャック・グリフィンがいなくなってしまった事を心配するジャック・グリフィンの恋人フローラ・クランリーは、ジャック・グリフィンの同僚のアーサー・ケンプ博士に相談する。
アーサー・ケンプはジャック・グリフィンが透明人間だと気付き始めた時、アーサー・ケンプの前に透明のジャック・グリフィンが現れ、アーサー・ケンプを脅して自分の研究の手伝いを強要する。
ジャック・グリフィンの隙を見て警察に通報したアーサー・ケンプだったが、警察からジャック・グリフィンは逃れ、アーサー・ケンプ殺害の予告をして消えてしまう。
ジャック・グリフィンの策略によりアーサー・ケンプを殺害。
しかし、警察に追い詰められたジャック・グリフィンは銃で撃たれてしまい、フローラ・クランリーに看取られながら元の姿に戻って死んでしまう。

1930年代のフランケンシュタインの怪物シリーズを見たので、今度は同じユニバーサル・モンスターズから透明人間を見てみた。

謎の人物の登場から、狂気の殺人鬼の透明人間を描き、それに怯える人々と何とか捕まえようとする警察。実は透明薬はそれを売って貧乏から脱出して恋人と結婚する為だったという主人公の設定もしっかりして展開はちゃんと見せる様になっているし、透明化する為に使った薬品モノケインのせいで頭がおかしくなり殺人を繰り返すという、モンスター映画ではなくサイコパスな殺人鬼のホラー映画として結構良く出来ている。
人々を暴力で殺して行く所か、列車の切り替えを替えて電車をぶつけて百人規模の虐殺までするし、思っていた以上に凶悪。
薬のせいで世界を支配するという考えに取りつかれ、それが理由で人殺しを始めるのも釈然としない正に狂気。
見えてはいないけれど素裸の透明人間が外の道で歌を歌いながら人殺しをする為に人を追いかけている場面なんて、行っちゃってるし。

何より透明人間の透明を表現する為の技術や合成、SFXやVFSが非常に良く出来ていて、1933年と考えると素晴らしい。
白黒だからというのもあるのか、合成は端がぼやける事も無く綺麗に透明に合成され、今見ても透明人間の透明さは良く出来ている。
一人でに扉が開いたり閉まったりとかの動きはもちろん、雪の上に足跡が付いたり、倒れ込んだ時の雪の凹みとかも良く出来ている。

ただ、良く分からないのは、何故ジャック・グリフィンは透明になる薬は作ったのに元に戻る薬は全く作っていなかったのか?という事。
この部分が間抜け過ぎるし、それに何で機材も薬品も揃った自分の研究室ではなく田舎の宿やで研究をしたの?も分からない部分。
お節介で余所者を監視するのが分かっている田舎で金も払わずに部屋で何かの研究していたら、そりゃあかまってくるだろ。
で、それにぶちぎれて、よし!殺してやる!は薬のせいなんだろうけれど、もう怖過ぎ。

あと気になったのは、この映画の構成が映画「フランケンシュタイン」とほぼ同じ事。
「透明人間」ではフランケンシュタインの怪物とフランケンシュタインが合わさった感じの展開で、長年研究していた博士が失踪し、その恋人が心配して博士の友人に探して欲しいと頼み込み、その友人は博士の恋人に気持ちがあるんだけれどそれが後の伏線になっておらず、二人の関係はそれ以上特に発展せず、怪物が暴走し始めて殺人を犯し、怪物は友人(「フランケンシュタイン」の時は博士)を殺そうとし、怪物は村人に殺されてお終い…って、「透明人間」も「フランケンシュタイン」も脚本の土台がほぼ一緒。
これは1930年代の王道な展開だったからなのか?それとも「フランケンシュタイン」が当たった事で真似たのか?

この映画、説明の足りなさはあり、もっと透明人間の思いや狂気を知りたかった部分はあるものの、人々の機微をちゃんと丁寧に描きながらホラーやサスペンスを作っているし、透明人間の包帯にサングラスという見た目も抜群に不気味でカッコ良くもありで良いし、特殊効果や視覚効果は今見ても上出来で、1933年という時代を考えると十分に楽しめる映画。

☆☆☆★★

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