紳士は金髪がお好き
2015年07月23日 木曜日ハワード・ホークス監督、マリリン・モンロー、ジェーン・ラッセル共演の1953年の映画「紳士は金髪がお好き(Gentlemen Prefer Blondes)」。
アニタ・ルースの小説「紳士は金髪がお好き」ふが原作のミュージカルを映画化。
ショーガールのローレライとドロシーは、ローレライが金持ちガスと結婚する事になりパリに行く事になったが、ガスの父親の横やりが入りガスはパリに行けなくなった。しかし、ローレライは迎えに来るまで帰らないと言ってガスを置いたままパリまで船旅に出る事にした。心配したガスはドロシーをローレライの監視役として付けたが、ローレライは船内で金持ちを探すは、ドロシーは男前や何らかの才能を持った男性を手当たり次第に声をかけたりかけられたりで、二人共自由奔放。
この映画でおもしろいのは二人の主人公の性格。マリリン・モンローは「お金の心配が無く相手を愛したいから、お金が大事」と言って、常にお金持ちの相手を探し回っているお金が一番のアホの娘。一方のジェーン・ラッセルはお金には興味は無く、見た目の良さや才能の有り無しで相手を選ぶ皮肉屋と極端に違う性格なのに、そんな性格の違いをお互いで心配して面倒を見ている姉妹の様な仲の良さ。
要はバディ・ムービー的なデコボココンビの恋愛コメディで、この二人の関係性がおもしろくはあるけれど、話自体はつまらない。
延々と船内でマリリン・モンローは金持ちのおっさん、おじいさんを物色。ジェーン・ラッセルは男前だという設定だとは思うけれど、特にカッコ良くもない男性を物色しているだけで特におもしろい展開でもないし、マリリン・モンローの浮気を心配して送って来た探偵もその展開は遅くて、サスペンス的な部分で全然跳ねないし。
話は結構省いて説明もないまま次に行くし、主役二人はそれなりに性格や考えが描かれるけれど、男性陣はただのアホばかりで、探偵も何でジェーン・ラッセルに惚れたかとかの描写が全然少ないし、描写が不足している所は多い。
「マリリン・モンローが綺麗!」という恋愛コメディの誇張とは言え、マリリン・モンローをニヤニヤしながら目で追う性欲剥き出しの男性ばかりだし、マリリン・モンローは「金!金!」、ジェーン・ラッセルは「良い男は?」と誰もが下心ばかりで、昔の恋愛コメディなのに近年のもっと剥き出しの恋愛映画よりも下品な感じばかりしてしまう。
そして、ミュージカルの映画化という事で行き成り歌と踊りが入るけれど、序盤は10分に一度位の配分で歌と踊りが入ったのが中盤になると40分程一切無しという、ミュージカルだったという事を忘れてしまう物凄い不均等さ。ミュージカルとして物凄い中途半端でしかない出来の悪さ。
ただ、主人公の二人は良い。
マリリン・モンローはやっぱり前向きな頭の弱い娘を演じさせたら抜群に光る。「金髪美人は見た目は良いけれど、頭はねえ…」という、要はブロンド・エアヘッドの印象って、まさにマリリン・モンロー。
ジェーン・ラッセルはこの時32歳で、昔の女優って年齢以上に老けて見えるけれど、そのおばさん臭いひねた感じが役柄と合っていて配役が上手い。と言うかこの人自身が姉御肌でマリリン・モンローを守っていたという様な話を見ると、ちゃんと人見て配役してたんだろうなぁ。
それに終盤でマリリン・モンローの身代わりになって彼女を演じるんだけれど、その時の喋りがマリリン・モンロー真似ていて、それが非常に上手い。歌って踊るし、この人芸達者だったんだなぁ。
マリリン・モンローが歌う歌の中で「女が老ければ魅力は消え、男は冷たくなるけれど、ダイヤは永遠に輝き続ける」って出て来るけれど、マリリン・モンロー演じる役の主張でも行動原理でもある「若さや見た目の良さだけが売りなら今の内に大金を手に入れなくてはいけない」という割り切った人生でもあり、論理的でもあり、ある意味真理を突いている部分を歌っている。でも、美人女優と言うアイコンであるマリリン・モンローでないと成り立たないし、嫌味にしかならないし、アホさが前面に出たマリリン・モンローだからコメディになるけれどこの考え自体は哀しさもあるしで、この映画で一番おもしろい部分かも。
この映画、マリリン・モンローとジェーン・ラッセルの存在感と役柄が非常に良いだけに、話のスッカスカした物足りなさが逆に際立ってしまった。折角の二人の為にもう少し良い脚本だったらなぁ…と残念。男性陣が主役二人の為のお人形さんでしかないので、今なら男女共にもっと活き活きとしてやり合う会話劇になって、それでも女性が懐柔させてしまうというおもしろさになっただろうに。でも、マリリン・モンローとジェーン・ラッセルでないと成り立ちもしないだろうから、やっぱりこの二人が引っ張って作ってしまっている感はありあり。
☆☆★★★