ミート・ザ・ペアレンツ
2013年11月04日 月曜日ジェイ・ローチ監督、ロバート・デ・ニーロ、ベン・スティラー共演の2000年の映画「ミート・ザ・ペアレンツ(Meet the Parents)」。
交際している彼女に結婚を申し込もうと思ったベン・スティラーが、彼女から妹の彼氏が先ず両親に会いに行ったという事を聞き、二人で両親に会いに行く事に。ただ、彼女の父親は元CIA局員で娘が心配で探りを入れて来る。慣れない家族に入り込み、馴染もうとするベン・スティラーだったが、やる事成す事裏目に出ててんやわんやになるコメディ。
両親の家に行くまでは非常にベタな「おもしろいでしょ!」感ばかりの普通なアメリカン・コメディで、「要は父親がロバート・デ・ニーロだという事が笑い所なんでしょ。」と思ってあんまり期待せずに見ていたら、既に関係性が出来上がっている彼女の家族に知らない彼氏がやって来て気まずいという、中々興味深い家族ドラマが話の中心で結構おもしろかった。ベン・スティラーが皆に、特に父親に気に入られ様と奮闘するけれど上手く行かないのはコメディが過ぎる部分もあって、ちょっと笑いに走り過ぎたとも思うけれど、この身近な絶望感って下手なサスペンスよりも全然現実味があって、見ていてもちょっとぞっとした。わたしはこんな事なんて無いけれど、わたしの妹の旦那が結婚前に家に来た時ってこんな感じだったのかと思うと、この変な居心地の悪さを想像してニヤニヤしてしまった。
それにアメリカの恋愛映画の特徴でもある社会的立場や思想的差異による障害もおもしろい。ロバート・デ・ニーロ一家は田舎町の広い豪邸に住む、良いとこの所謂保守。一方ベン・スティラーはシカゴという都会に住み、医者よりも良いと考えて看護師になっている様な人物で、このベン・スティラーとベン・スティラー以外が対立する様な王道な対立軸が大きな障害の要素でも、笑い所でもある。このベン・スティラーの看護師って言うのが、彼女の妹の旦那一族は医者ばかりで「何で医者にならなかったのか?」と聞いて来る様な「看護師は女性がする職業」というのが当たり前だと思っている人々との、この微妙な社会的地位に対する考え方の違いで気まずい雰囲気になったする。流石に頭ごなしに否定はしないけれど、ベン・スティラーはユダヤ人という時点で田舎の保守の人々の戸惑いが出たり、根本的な所での違いに戸惑う場面が色々と出て来る。これが笑いになり、ベン・スティラーに共感する様に作られているって事は、都会の人々向け映画という事なんだろうか?田舎の保守層にとってはベン・スティラーはただ単にうっとおしいだけの人なんだろうか?まあ、ベン・スティラーは別に看護師でもユダヤ人でなくともうっとしい感じは元々あるんだけれども。
ベン・スティラーが異質な人々に巻き込まれて行くのだけれども、ベン・スティラー自身が原因だったりもするのが共感を呼ぶ所。ベン・スティラーは皆に気に入られようと、相手に合わせる様に答えるのだけれど、その為に小っちゃい嘘を付いてしまい逆にロバート・デ・ニーロに不審がられる元になっていたり、人の家に来ているのに雑に行動するモノだから問題噴出したり、ベン・スティラーは良い人ではあるけれど決して出来た人ではなく、結構馬鹿な部分が多いので自業自得な所も感じてしまい、現実味のあるコメディにならないのは、無理矢理な事も出させてしまう変に笑いに走るアメリカン・コメディだからか。「パメラ・マーサ・フォッカー」や「ゲイ・フォッカー」とか、日本で言う「馬場文子」的なしょうもなさ、幼稚さで、「この笑いってアメリカ人の大人でも大笑いなのか?」と一瞬考えて、「笑って良いモノなんだろうか…?」と戸惑う所もあるし。
話の展開としては王道。ベン・スティラーとロバート・デ・ニーロ及び彼女家族との微妙な違和感を始めから見せ、徐々に父親との関係、何をしても上手行かないベン・スティラー、揉めに揉めるけれど腹割って話して理解しあってめでたしめでたしと、上手くまとめている。最後にロバート・デ・ニーロが「彼の両親に合わないとな。」と言うのも、続編への期待を見せてくすぐられる所。しかし、結構脚本や演出で甘い部分も。ロバート・デ・ニーロは家に入る時は辺りを確認してから入る位慎重な人なのに、ベン・スティラーにはあっさり取引現場を見られていたり、人間嘘発見器と娘からさえ言われているロバート・デ・ニーロが一緒に暮らしている自分の息子のマリファナの事を知らなかったりと、何か脇が甘い。それに、この息子、彼女の弟はベン・スティラーが家にやって来ても全然登場せず、それまで話題にも上らなかったのに中盤で突如現れ、見ている方としては「えっ?弟がいたの!?」と急な登場に戸惑う。この弟は登場したから何か話に絡んで来るのかと思ったら、その後は台詞はほとんどなく、単に「ベン・スティラーがマリファナを…?」という笑いの一ネタにする為の導入だけの登場で、物凄く雑な扱い。
ベン・スティラーはアホっぽい青年で良い感じなんだけれど、この時35歳で意外と歳が行っているから、この抜けた感じの役にちょっと違和感を感じる所も。この歳の看護師長にもなる様な人が人付き合いが上手くなく、微妙な嘘で誤魔化すなんて違和感。もうちょっと若い人なら、このドジな感じでもすんなり受け入れられると思うのだれけど。ベン・スティラーって、この映画位から注目される様になったと思うけれど、これ以降アメリカではヒット作ばかりになるけれど、ベン・スティラー自身の役者の力と言うよりもアメリカン・コメディアンって日本だと常に微妙な扱いばかな感じがしてならない。
ロバート・デ・ニーロはロバート・デ・ニーロなんだけれど、笑い顔の場面が多く、この表情を見る度にと元どーよのテルのロバート・デ・ニーロの顔まねを思い出してしまって、違う所で笑ってしまった。
この映画、コメディ部分の空回りや少し無茶な部分があるけれど、展開は王道で結婚した男性なら楽しめるだろうし、結婚前の男性ならこの微妙な嫌な感じ、居場所の無い感じを苦笑いしながら恐怖して楽しめる、中々おもしろいコメディ。
☆☆☆★★