知りすぎていた男

2013年10月28日 月曜日

アルフレッド・ヒッチコック監督、ジェームズ・ステュアートドリス・デイ共演の1955年の映画「知りすぎていた男(The Man Who Knew Too Much)」。アルフレッド・ヒッチコックが1934年に制作した「暗殺者の家(The Man Who Knew Too Much)」のセルフリメイク。

旦那と妻と息子の三人でモロッコへ旅行へ来たマッケンナ一家。移動のバスの中で出会ったフランス人の行動が怪しく、妻は不安に思う。次の日、一家の目の前でモロッコ人に変装したそのフランス人が誰かに殺され、彼の最後の言葉「政治家が暗殺される…」と言うのを聞いたベン・マッケンナ。やがて「話せば息子の命はないぞ」と言う脅迫の電話がかかってき、息子を託していた老夫婦は何処かに消えてしまう。マッケンナ夫妻はイギリスに渡り、警察の力を借りずに息子を探し出そうとする。

全く関係無い陰謀に巻き込まれ、息子を人質に取られた夫婦が奔走するサスペンスなんだけれど、ヒッチコックと言っても流石に60年近く前のサスペンスなので全体的に非常にまったりとしていて、恐さや緊張というのは少ない。今ならもっと短くカットを切る所や早めに展開する場面を長めに見せているので、ベタッとした平板感を感じてしまう。一番盛り上がる最後の暗殺場面はやたらと引っ張った感じだし。残酷なはずの暗殺犯も、二階から落とされる、階段から落とされるとか、引っ張った割に非常にしょうもない幕切れ。最後のオチなんかドリフのコントのオチみたいで、全然今までの雰囲気とも合っていないし。
それに室内はシットコムの様な一面の壁が無い安っぽいセットに加え、外の場面はやたらと人物と合成していると言うのも作り物感を際立たせて、サスペンスに必要な緊張感が無くなってしまっている。凄いのは、モロッコ自体の風景等は外での撮影はしているのだけれど、ジェームズ・ステュアートやドリス・デイが登場するモロッコの外のでの場面は全て背景と合成している。音の響きや照明の当て方はスタジオでの撮影丸分かり。ここまであからさまな製作費と時間の節約をされると、見ていても制作側の事情ばかり見え透いてしまい、映画に入って行けない。

ビリー・ジョエルの歌の「We Didn’t Start the Fire」の出だしで「♪Harry Truman, Doris Day…」とあり、Doris Dayって何かの特別な事が起こった日かと思っていたら、この映画見て初めてドリス・デイが女優だと知った。

当時はこれで十分なサスペンスだったのかもしれないけれど、今見ると結構グダグダして緊張感も無いし、ただ一つの話で特に目を引く展開も無いまま二時間引っ張られても怠い。このもっちゃりした感じは流石にきつい。

☆★★★★

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