ミシシッピー・バーニング

2013年06月21日 金曜日

アラン・パーカー監督ジーン・ハックマンウィレム・デフォー共演の1988年の映画「ミシシッピー・バーニング(Mississippi Burning)」。

1964年のフィラデルフィア。公民権運動家が行方不明になり二人のFBI捜査官が調査を始めが、町では公然と黒人に対する差別や暴力が溢れていた。

この映画と言うか、この時代のアメリカの人種差別だけでなく、人種や民族差別を描いた映画、特に戦争が絡んで来ない映画というのは理由や行動が理解し難く、特に意味も分からず凶暴化した人間が人を襲うというバイオハザードモノの映画を見ている感覚になってしまう。貧困や自分の境遇を嫌忌し、他人を貶めたり、傷付ける事で自己を保とうとするクソ野郎は今でもいるし、「あいつ」ではなく「あいつ等」と分かり易く論理が破綻しているので理解し易い部分もあるけれど、黒人に対する白人の憎しみが訳の分からないまま町中で当然の如く繰り広げられ、一方でそれに反抗もしないし、逃げ出しもしない黒人達という現実にあった世界を見せられると「何で?何で?」ばかりで付いて行けない部分が多い。単なるイカレ野郎、サイコ野郎共が暴れまくっているだけにしか見えず、公民権法前後の歴史を知っていないと物凄い異質な世界。
しかも、実際のこの当時の政府やFBI等の政府機関は南部での人種差別の捜査等には非協力的だったらしく、実際に起こったこの三人の行方不明者に対する捜索願いも全然捜査しなかったらしいし、この映画自体が贖罪的なもしもの過去を作り上げている様で、白ける部分と、理想を描く事で事実がグンニャリと曲がってしまう恐ろしさをも感じた。

この映画は題材が重い分、ジーン・ハックマンとウィレム・デフォーの二人で引っ張っている。ウィレム・デフォーは如何にも都会のエリートで、捜査も真っ直ぐ、大人しいけれど犯罪を憎む人。一方のジーン・ハックマンは、結構軽い感じで調子良く人に取り入る術を知っている如何にもベテラン刑事といった感じで、ミシシッピの出身で保守っぽい感じもあるけれど、同じく犯罪や差別を憎む人で物凄い熱い捜査官なので見ていて気持ち良い。ただ、この二人が正面でぶつかりあう場面はそれ程多くなく、もう少し絡みがあっても…と思う所ではある。
ミウィレム・デフォーはまだこの時33歳で、役柄的にも若造なのにベテランのボスなのに、見た目が相当おっさんで十分ベテラン捜査官と言っても通用してしまう。
ジーン・ハックマンって何時見ても何かのベテランを演じていると思う位、何事にも慣れた感じが本当に良く出ている。こんな捜査官が脇にいてくれたら非常に安心する以上に、こんな役者が映画にいると非常に安心出来る。

演出としては大人し目だけれど、扱っている題材が深刻なだけにしっかりと見れる。映画の始まりで「WHITE」と記された冷水器と、「COLORED」と記された水飲み場で、この映画の主題が分かる上手さ。しかも、この水飲み場は同じ水道管が二つに分かれているだけで、元は同じだけれどその後の扱いが違うという現状を表してもいて、グッと来る場面が行き成り登場して、捕まれる。

他人に対する思いやりが全く無い、頭のおかしい暴力的な人種差別主義者が好き放題する映画なので、イライラとするだけで見ていても全然楽しい気分にはならないけれど、それだけそれを上手く描いている映画。やっぱり主役のジーン・ハックマンとウィレム・デフォーの二人の存在感が大きい。

☆☆☆★★

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