キッド
2013年06月16日 日曜日チャールズ・チャップリン製作・監督・脚本・音楽・主演の1921年の映画「キッド(The Kid)」。
この映画もパブリック・ドメインになっている様で、Internet Archiveで見る事が出来る。「The Kid」。
チャップリンが路地裏で拾ってしまった捨て子の赤子を育てる事に。五年後、親子の様に二人は暮らしているが、やがて自分の子だと知った母親が現れて二人はどうなってしまうのか…。
この映画はチャップリンが主役と言うよりも、子供のジャッキー・クーガンが主役。チャップリンは毎度の一人ドタバタで特に…だけれど、この子の演技が非常に良くて、目はそちらにばかり行ってしまう。はしゃいでいる時も本当にはしゃいでいる様に見えるし、訳の分かっていない時は子供的ぽかーんとした顔だし、泣く時も本気で嫌がっている様に見えるし、一つ一つの演技も非常に自然な上、ちゃんと見せる演技をしている事が驚き。この映画では完全にチャップリンを食ってしまっている。それをチャップリンも分かっているからなのか、時々急に「俺が主役だ!」と言わんがばかりに、自分の独壇場のコメディを挟み込んで来る。途中の喧嘩の場面とか夢の場面なんて、それ程おもしろくもないのに結構引っ張って見せ、それまでの疑似親子の温かくも切ない映画の流れや雰囲気や話がそこで途切れてしまい、コメディアンのチャップリンを見せたがる感じを余計に感じてしまう。
しかしこの子、女の子だと思ったら、ジャッキーって男の子だったのか。
話としては分かり易い話だけれど、非常にご都合主義でもある。子供を捨てた親は五年後に行き成り大女優になっており、裕福になり、偶然あっさりその子を発見してしまったり。まあ、50分程の時間ではこうなってしまうか。
話は親子じゃない親子の愛情物語である分、やっぱりチャップリンのコメディ部分が余計に感じてしまう。他の映画でもそうだけれど、これがチャップリン映画と言えばそうなのかもしれないけれど、一本の映画として話をどう展開するかよりも、とにかく自分のおもしろを見せたくて、それが優先されるモノだから何だかそこで醒めてしまう。
しかし、話は優しい親子関係で泣かせる展開だし、何より子役の演技が全てを一段上に上げ、表情を見ていてもほっこりする映画に仕上がっている。
今まで見たチャップリンの映画の中では、この「キッド」が一番良い。
☆☆☆★★