チャップリンの黄金狂時代
2013年06月15日 土曜日チャールズ・チャップリン製作・監督・脚本・音楽・主演の1925年の映画「チャップリンの黄金狂時代(The Gold Rush)」。見たのはサイレント映画にチャップリン自身がナレーションを付けた1942年のサウンド版。
この映画もパブリック・ドメインになっている様で、Internet Archiveで見る事が出来る。「THE GOLD RUSH (1925)」。
金の採掘で賑わうアラスカの地に、フラフラと現れ、ドタバタするチャップリン。
実際はスタジオ撮影だと思うけれど、雪山を模した撮影や、大人数を動員したり、傾く山小屋とか結構大掛かりなセットを使ったりして、単なるチャップリンの喜劇だけではなく映像的に見せている。それに、「靴を茹でて食べる」や「パンにフォークを刺して、それを脚の様にして顔と手で踊る」等、多分チャップリンの喜劇と言えばな、映像的に一番有名な場面が沢山。それだけチャップリンの俺が俺がのドタバタよりも映像的な映画に仕上げていて、今見ても見れる映画になっている。
内容的にもドタバタだけでなく、流れ者の孤独も描いている。皆が騒いでいる中、それを見ながら独りぼっちの表情とか、飲み屋で人々が踊っている中、一人ポツンと立っているチャップリンの後ろ姿とか、物凄く切なくて良い。そして、これからを期待させるハッピーエンドも心地良いし、上手い締め方。
でもしかし、やっぱりチャップリンのドタバタ劇は一人でドタバタして必死に笑いを誘おうとしているけれど、今見ると「この時代のチャップリンの喜劇」という歴史的な見方以上のモノはなく、笑いなんて起きない。それと、サイレント映画なので演技が大袈裟なのは分かるけれど、チャップリンの演技でよく分からないのは時々チャップリンがカメラ目線になる事。これって、サイレント映画だという事と当時の劇場と観客の関係に関係している演技なんだろうか?一々カメラを見る意味がいまいち分からず、これが何を示唆しているのか考えてしまい、暫く映画を見ていない事に気付いた。
意外と特撮が良く出来ていた。人が乗った崖が崩れて落ちる場面の合成とか、崖に落ちる家から逃げ出す所とか、ちょっとブレはしているけれど今見ても「おっ!」と目を引く場面になっている。
この映画で一番興味深かったのは、場所がアラスカだった事。ゴールド・ラッシュと言えば、暑い地方や西部劇の影響で砂漠や荒野の印象が強いけれど、こんな極寒の地域でも金の採掘していたなんて知らなかったし、思ってもみなかった。その部分での「へ~。」が一番大きかった映画かもしれない。
この映画、コメディはチャップリンの喜劇だけれど、それ以外の映像として見せる部分や切ない恋物語等、後年のクドクドとして説教臭い割にまとまりがなく、しかも無理矢理ドタバタを挟んで来るつまらない映画からすれば全然おもしろいコメディだし、切ない映画。
☆☆☆★★