目撃

2013年01月22日 火曜日

クリント・イーストウッド製作・監督・主演、ジーン・ハックマン共演の1997年の映画「目撃(Absolute Power)」。

老年の泥棒がたまたま入った家で殺人を目撃してしまう。その殺人の犯人は大統領とその取り巻きであり、事件をもみ消そうとする。初めは知らぬ顔だった泥棒は、大統領達を脅し始め、逆に脅されもし始める。

至って平凡なサスペンス映画。展開はまったりと、見せ方も緊張を醸し出す感じでもなく、物事を引っ張る割にあっさり解決してしまい、全体的に肩透かし感は強い。始めからクリント・イーストウッドは泥棒だけれど良い人で、事件を追う刑事のエド・ハリスは早い段階からクリント・イーストウッドは怪しいけれど殺人犯ではないと気付き、支援してくれるのは、どうにも予定調和な感じ。それに「Absolute Power」という題名の割に、追い詰められる強権発動は出て来ないし、むしろ邦題の「目撃」が正しい感じ。
泥棒だから事件から逃げようとするけれど、一転大統領に脅しをかけ始める理由が、ジーン・ハックマンが堂々と嘘をつき、テレビで見ていてうっとおしいと思ったというのが良い。変な正義感ではなく、「こいつ最低!うっとおし過ぎる!黙れ!」というのはすっごい現実味。しかし一方で、この理由と同じく、映画全てがチンマイ感じ。大統領の陰謀や暗殺とか、非常に膨らむ話なのに、こじんまりと進みこじんまりと終わってしまう。
実はこの映画の一番の見所でもあり、一番おもしろいのは、始まってすぐの、クリント・イーストウッドが盗みに入った屋敷で誰かが来たと思ったら、ジーン・ハックマンが女性と共に現れ、嫌らしい顔しながら嫌らしい事始めたら行き成り暴力沙汰になり、それを怪訝な表情だったり、驚いた表情でマジックミラー越しに黙って見続けるクリント・イーストウッドの場面。おじいちゃん達何してるの?で、ニヤニヤしながら見てしまう。そこ以降はほぼ盛り上がりが無い。

クリント・イーストウッドが中々捕まらない大泥棒という役柄なんだけれど、コンピューターを操る手付きがしっくり来なかったり、190cm位もある背の高いおじいちゃんなので人目に付き過ぎるし、どうにも泥棒っぽくない。実は娘を見守る父親で、決して悪人じゃあないというのも、泥棒という設定が活きて来なし、序盤以外泥棒的に目立った活躍も無いし。
ジーン・ハックマンが大統領だけれど、絶対に民主党ではなく共和党の政治家だと思ってしまうのは、ジーン・ハックマンの雰囲気なのだろうか。女好きで揉み消しに入る大統領と言えば民主党なのに。
ジーン・ハックマン以外にも出演者は豪華。エド・ハリス、スコット・グレンデニス・ヘイスバート等。
大統領の護衛官役でデニス・ヘイスバートが出ているのだけれど、わたしの馴染みとしては大統領と言えばこの映画のジーン・ハックマンではなく、「24」のデイビッド・パーマー大統領のデニス・ヘイスバート方で、大統領が大統領の警護している変な感じと言い、更に彼の吹き替えが「24」のCTU実行部隊を指揮していたカーティス・マニングの吹き替えだった楠大典なので、何かゴチャッとして来る。しかも、「24」で最強の登場人物だったデイビッド・パーマー夫人のシェリー・パーマー役のペニー・ジョンソン・ジェラルドも出ているので、大統領夫妻が揃い更に変な感じ。あと、デニス・ヘイスバートが狙撃に失敗し「Damn it!」と言ったのには笑ってしまった。ジャック・バウアーみたいな大統領。
それに、途中でクリント・イーストウッドの娘が運ばれた病院が、TVドラマ「ER」のセットそのまま。

登場人物達の描き方や出演も散漫で、役者は豪華な割りに誰もが、主人公のクリント・イーストウッドでさえ前に出て来ず、全員が目立たない脇役の様。話も各人の設定を活かす訳でも無く都合良くあっさり済んでしまい、役者が濃いから幾らでも濃い話に出来るのにびっくりするぐらい薄味。出演者は豪華だし、クリント・イーストウッドが監督・主演をしているけれど、1990年代の平均点前後の出来でしかない量産されたよくあるサスペンス映画の内の一つでしかない。

☆☆★★★

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