ビッグ

2012年11月15日 木曜日

トム・ハンクス主演の1988年の映画「ビッグ(Big)」。

12歳の少年が憧れの女の子と一緒に遊園地の乗り物を乗ろうとするけれど、身長制限で弾かれてガッカリ。その遊園地にあった望みを叶える遊具機械に「大きくなりたい」と硬貨を入れると、次の日の朝おっさんになってしまっていた。子供に戻ろうとその機械を探すれけど移動遊園地だったので見つからず、大人として生きて行く事になる。

子供が突然大人になり、大人の目が無い自由な暮らしと、玩具会社に勤める事になり周りは玩具だらけで、子供が欲しい物、したい事が望みのまま、そして女性へも行ってしまう、大人への憧れという子供の大人心をくすぐり、更に見た目は大人だけれど中身は子供なので、子供の時にしたかった様な事をはしゃぎながらし放題という、童心に帰りたいと言う大人の子供心を上手くくすぐる映画。
序盤は子供が大人の世界を覗き込む様な話。玩具で遊び、自由に意見を言う事で行き成り会社の重役になるとか、このトントン拍子の流れが最高に楽しい。社長のおじいちゃんと気が合い、おもちゃ屋の床に敷かれたキーボードを踊りながら演奏する場面なんて、トム・ハンクスの子供的真剣さと、社長の楽しい事が大好きでおもちゃ屋やっている感じが前面に出て来ていて、更に盛り上がりもありで非常に良い場面。
前半の構成も上手い。子供から急な大人への変化に戸惑い、都会に行けば今までの子供では出会わない、危ない環境を見せ不安を募るけれど、それ以降は全てが上手く行く楽しさで一気に話を見せる。
そして、主人公と友達の二人の設定も上手い。主人公は見た目は大人だけれど、精神的には本当の歳よりもまだまだ子供であんまり賢くないし物を考えていないけれど、一方の友達は子供なのにしっかりしていて常に主人公を引っ張って行くという大人と子供が逆転している設定で、よりほのぼのとしたコメディ感を引き出している。
ただ後半からは、大人が作った大人向けの物語になってしまっているきらいがある。主人公は12歳でもまだまだ子供で、女の子には興味があるけれど性的には目覚めていない感じなのに、結構女性に行く。相手役のエリザベス・パーキンスはこの時28歳。まだまだ幼い12歳の子が30近い女性に興味を持つかと言ったら、正直「おばさん、おえ~。」という感想だと思う。更に彼女としてしまうなんて、今のファミリームービーじゃまず無理な展開。トム・ハンクスの見た目は30過ぎだけれど本当は少年なのに、30近い女性のラブシーンなんて上映出来ない。それに、一回寝たから急に大人ぶると言うのは、もっと年上な中学・高校生位の感じ。終盤での大人の今の生活に疑問を持つ様に子供を見つめるトム・ハンクスの表情は、子供だからのホームシック的な懐かしさではなく、大人が懐古する懐かしさで、子供はあんな風に見つめないだろうし、「残る理由なら、君だ」とか言う台詞は完全に大人。この12・13歳らしからぬ急激な精神的成長ぶりは、物語を大人が感傷に浸れる方向に持って行きたいのは分かるけれど少々やり過ぎな感じ。中身まで完全な大人になってしまっている。
それに後半になると、折角良い立ち位置で役柄的にも良かった社長が一切話に絡んで来ず、社長の登場が単なるトム・ハンクスが玩具会社の重役になる為の導入だけだった事が残念。

驚いたのは、牛乳パックに行方不明の子供の写真を載せて捜索協力をしている事。当時のアメリカでは結構あった事なのだろうか?朝から牛乳飲むのにあんな記事があったら、朝からどんよりするから、こんな牛乳売れないのじゃあなかろうか?

トム・ハンクスはこの映画の時点で32歳。それなのにあの子供な仕草や落ち着きの無い動きで、子供の様に見えてしまう演技は流石に上手い。32歳には見えない。ただ、子供から急にトム・ハンクスになってもそんなに違和感がなかったのに、トム・ハンクスが子供に戻ると、その子役が全然似てなくて「あれっ?」感が強過ぎる。

前半は子供が想像する「もしも大人になったなら」と、大人が思う「子供の無邪気さを持った大人」の部分が上手く交じり、話が展開していたのに、後半になると中身は子供なはずなのに、如何にも大人が作った大人目線の展開になってしまうのが非常に惜しい所。ただ、この無茶な設定をちゃんと楽しくも見せているので、なかなか楽しめる映画。

やっぱり気になるのは、主役の彼がしていたあのテキスト入力のグラフィックアドベンチャー。どうやらこの映画用の独自のコンピューターゲームらしい。しかし奇特な人もいるモノで、このゲームを再現して遊ぶ事が出来るサイトを見付けた。

Cavern of the Evil Wizard

映画通り、「Melt Wizard」「Throw Thermal Pod」と打てば、ちゃんとクリア出来る。しかし映画でもこの部分しか出て来なかった様に、これだけのゲーム。

☆☆☆★★

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