ミッシング
2012年11月08日 木曜日ABCで2012年に放送された、アシュレイ・ジャッド主演の連続TVドラマ「ミッシング(Missing)」。全十話のミニシリーズ。
大学生の息子が行方不明になり、元CIA諜報員の母親アシュレイ・ジャッドが息子を探してヨーロッパ中を駆け巡る。アシュレイ・ジャッドはCIAを引退した元エージェントで、すでに普通の母親になり、ただ普通と言っても格闘や交渉が手慣れたモノで普通でもないが、その母親が必死に子探しをするアクションドラマ。
アシュレイ・ジャッドはテロの巻き添えなのか、彼を狙った暗殺なのか分からない事件で夫を亡くして一人で息子を育てて来た事もあり、息子を見つけ出すならCIAやインターポールさえ脅したりすかしたりしながら協力させ、犯罪・殺人当たり前の恐ろしい程の執念と行動力で動きまくる。
サスペンスとアクションの連続になり、どうにでも料理出来る設定なのにどうにも盛り上がりに欠ける。大体毎回「息子の情報を掴む→その情報を知る敵が現れる→何とかして敵に近づく→敵死亡→息子は何処に?」という流れで序盤の数回は進み、同じ事の繰り返し感が強く、掴みで結構飽きが来る。それを製作陣も感じたのか、中盤辺りからクリフハンガーで回をまたぐ様になって来るけれど、次の回の頭一分程であっさり解決する様な引っ張りなのでクリフハンガーとしては弱い。ただ、中盤辺りからは予定通りなのか、テコ入れなのか、ショーン・ビーンが再びレギュラーとして登場し、話も過去の回想や、過去にまつわる因縁がこの事件に関わっている事を見せ始め、徐々におもしろくはなって来る。それでもスパイ・アクションモノとしては映画の二時間位で一気に見せる事を十話に引き伸ばした感は強く、一話一話で途切れ、何時まで経っても勢いが出なかった。別に十話でなく2~4話位でまとめれば、もっと話的にもアクション的にも機敏なモノになるんじゃなかろうか?
毎回ヨーロッパの違う国に行って風光明媚な観光名所等を見せたりしているので、外での撮影は豪華な感じはあるのに、室内はセット、それも結構安い感じのする作り物で、その差が激しく安さを感じてしまう。
役者はアシュレイ・ジャッド、ショーン・ビーン、クリフ・カーティスといったTVドラマにも出ているけれど、どっちかと言うと映画中心の人がレギュラーで、結構豪華。
アシュレイ・ジャッドは若い時はアンジェリーナ・ジョリーに似ていると思ったけれど、このドラマの彼女を見ていると、むしろアンジェリーナ・ジョリーの父親ジョン・ヴォイトに似ている。役作りは何処までなのか分からないけれど、髪を短くおばちゃん風にしていて、まだ40代半ばなのに50代半ばに見えてしまう。回想場面では髪を長くし若くは見せているけれど、歳は中々誤魔化せてはいない。しかし、追い詰められ、自分自身でも追い詰め、感情を押し殺しながらも「キッー!」となる中年女性の母親という役にはまっている。
ショーン・ビーンは第一話だけの特別出演、友情出演かと思ったけれど、中盤からレギュラーに復帰したのがこのドラマの一番の驚きかもしれない。ショーン・ビーンの顔が終始疲れ切った、憔悴した様な顔で怖い。役的にはそんな役なのだけれど。
他にもジャンカルロ・ロッシ役のアドリアーノ・ジャンニーニはイタリア人、オクサナ役のテレザ・ヴォリスコヴァやビクター・アシモフ役のカレル・ローデンはチェコ人、CIAのバイオレット・ヒース役のローラ・ドネリーはアイルランド人、CIAの上司役のジーナ・マッキーはイギリス人と、舞台設定と同様、脇役のヨーロッパ色も強く、色取り取り。
ジーナ・マッキーは何だかヒュー・グラントに似ているので、アシュレイ・ジャッドと一対一の場面だと、ジョン・ヴォイトとヒュー・グラントの共演みたい
このドラマで毎回気になるのは、オープニング・クレジット程長くは無い、題名「Missing」と出て来る場面で走っている人物。コート来た男性が走っているのだけれど、息子役のニック・エバースマンでもないし、ショーン・ビーンでもないし、もちろん主役のアシュレイ・ジャッドでもないし、誰の何の場面なのだろうか。
このドラマ、序盤の似た様な展開と、杉本彩が吹き替えの声優で出て来た所で心が折れかけたけれど、最後まで見て、感想としてはそれなりで、及第点に届かない感じ。連続ドラマとしての引っ張りやまとまりが悪く、TVドラマのミニシリーズなのであんまりお金かけられないのにヨーロッパ中を移動して撮影にお金かけてしまったのでアクションがそれなりになってしまい、これこそお金と時間をかけてアクション大作の映画として作るべきだったと思わせてしまう。主演のアシュレイ・ジャッドと、彼の夫役のショーン・ビーンはねっとり濃い感じで良いので、アクションさえおもしろければ映画としてヒットしそうな匂いはするのに。連続TVドラマとしての題材や、シリーズ通しての構成や見せ方の拙さがちょっとでてしまった感がある。