ウォーロード/男たちの誓い

2012年11月01日 木曜日

ジェット・リーアンディ・ラウ金城武共演の2007年の映画「ウォーロード/男たちの誓い(投名状)」。

清朝末、太平天国と戦う清軍の脱走兵ジェット・リーが、盗賊団のアンディ・ラウ、金城武と兄弟の契りを交わし、盗賊団の生活を守る為に清軍に入り、一団が命を懸けて戦う。実際の馬新貽殺害事件を基に作られた映画だけれど、何処までが史実なのかはよく分からない。

ただの盗賊団だった群衆を率い、戦いに勝つ為にはその場で冷静で容赦無い判断をするジェット・リーと、仲間への思いや敵への情で動こうとする為に彼と対立するアンディ・ラウ。彼らの間で二人の関係を取り持とうとする弟分的金城武という三人の関係が主軸になって戦争の話を描く。
この三人の人間関係は良く描けているけれど、彼らの目的がはっきりせず、今何の為に戦っているのかが分かり辛い部分があり、どうにもこの三人の熱さに付いて行けない部分があったりする。後半になると史実に準える為なのか、ジェット・リーが段々と欲しい物を手に入れ様としているだけに見える人間に移行し始め、金城武も投名状を信奉し過ぎて浅はかな方向に走るしで、急な崩しっぷりにどうも乗り切れない。そして、悪役は分かり易い自分の事だけの策略家、敵も民を思い自らの命を捧げる等、結構漫画的な人物の描き方なのは、この映画でも溢れる情の部分の武侠的感覚だからか。それに、問題があるから殺してしまえな解決方法も現代的感覚からすると非常に分かり難いし。展開も総集編的に話をサッと飛ばして進んでしまい、結構脚本や編集の作りが粗い部分が勿体無い。本来なら登場人物の心情や関係性をもっと描かなくてはならず、二部・三部構成か、TVドラマシリーズとしてやって丁度位の内容なのかもしれない。

アクションは功夫アクションではなく戦争での集団の戦いだけれど、ジェット・リーのアクションの動き、切れ、見栄の切り方が一人素晴らしく、しかしその切れっぷりが逆に浮いている様にも見える。戦争場面は人員動員で迫力はあるけれど、端の方のその他大勢になると、チャンチャンバラバラで真剣にしていないのが丸分かりなので、そこが見えると残念感一杯。それに日本の時代劇の様な簡単過ぎる切り殺され方だし、体もあっさり切られるし、血が派手に飛ぶけれどCG丸分かりだし、最近の中国や香港映画のいまいちな部分がこれでも出ている。

リー・リンチェイと言えば、黄飛鴻を始めとする無敵のヒーローが多いけれど、今回は始まりから戦いで生き残る為に隠れ、それを泣きながら後悔するというしょぼくれた役。しかしそれも初め位で、後は恐ろしい程の信念の人、揺るぎない人と分かって来、熱い正義感に溢れる指導者で、結構頻繁に激高するし、良よく泣くしで、演技派としてのジェット・リーが前面に出ている。
アンディ・ラウも同じく熱い男で、哀しい顔も見せ、単なる戦争映画ではないドラマ部分をジェット・リーと二人で担っている。ただ彼の辮髪が、五部刈り位の坊主頭に後頭部に辮髪を引っ付けていてカツラだと分かるし、ジェット・リー程似合っていない。
金城武って本当に時代劇が似合わない。顔が現代的男前だからなのか、演技が現代劇的過ぎるからなのか。それに彼だけ、やたらとアップのカメラ目線で語る場面が多いのは何なのだ?

音楽が一昔前の大作風、最近の日本映画的分かり易い盛り上げ方の音楽で結構興醒め。

それとこの邦題は何だ?三人の話なんだから「ウォーロード」じゃあなく「ウォーローズ」でないといけないし、「ウォーロード」と付けたならわざわざ「男たちの誓い」なんて付けなくていいし。まるで「男たちの挽歌」シリーズじゃないのに邦題で勝手に付けてしまった「ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌」みたい。中国・香港映画なんだから「投名状」でいいじゃんと思うのだけれど。最近の邦題の付け方って本当に安っぽい。

熱い男達の情の物語で濃さはあるのだけれど、彼らが共に戦い、勝った事により崩れて行く関係の描かれ方が、どうにも飛び飛び感、連続して綺麗に流れて行く感じが無く、ジェット・リーの見せ場も作らねばならず、戦争映画の部分も入れなくてはならず、最近の中国や香港映画でよく見る派手な戦闘場面が目玉になるとドラマ部分が総集編的になってしまう傾向がこれでもあり、三人の男達を描くにはやっぱり映画一本では時間が足りなかったか。大掛かりな戦争場面入れずに、男達の情だけの映画でも良かったかもしれない。

☆☆☆★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply