吸血鬼 – リチャード・マティスン
2007年12月16日 日曜日最近TVコマーシャルでバンバン、ウィル・スミス主演の映画「アイ・アム・レジェンド」を流していたが、この映画に原作がある事を知り、確か持っていたはずと本棚を見やれば、確かにあった。
しかし、あれだけ隠してTVコマーシャルしていたのに、一番最初の翻訳版の題名は「吸血鬼」思いっきりばらしている・・・。
ハヤカワ文庫版では「地球最後の男」になっているのだが。
で、その銀背版、ただしハヤカワSFシリーズなのだが、「A HAYAKAWA POCKET FANTASY BOOK」と表記されてる、リチャード・マティスン(現在のカタカナ表記はマシスン)の「吸血鬼」を、映画公開に合わせないと読まないはずと思ったので読んだ。
これが地味なのだがなかなかおもしろい。
延々、主人公の葛藤で進み、たった一人で追い詰められた人間が何を望むのか、そして更に越えてしまえば、むしろ平穏が訪れるのでは、という人生訓にも似た非常に染み入る話。
確かにバイオハザードというか、吸血鬼に対する、科学的、論理的定義に至る考証もおもしろいのだが、ちょっとした出来事や、そこから蘇る過去が、読み手に感慨や恐怖を引き起こすという事の方に興味は行った。
しかし、どうも後半はこの原題「I AM LEGEND」に持って行くための、短編的なオチへの動きが少々無理もあった様に思えた。
読み終わり「I AM LEGEND」という題を再見してニヤリとはしたが。
だからこそ当時の宣伝の為のか、邦題のばらした改題「吸血鬼」は全く納得出来はしない。
ふっと思ったのは、主人公がやけに酒を飲むという事。
それが一つの表れでもあるのだが、「ぐびぐび、パリーン…。おう、ドラマ的!」な場面が多かった。
そう言えば、初めて銀背を読んでみた。
読み終えて、この銀背版の「I AM LEGEND」の値段を見ると、150円!
昭和33年、西暦1958年発行と記してある。
これ自体は西暦1954年の小説と記してある。
もう50年、半世紀も前の本か…と懐かしさなぞ無い、妙な感慨。
調べてみたらこの年のそば一杯は35円で、映画館入場料が150円なので、当時のこの本の値段感覚は現在の分厚い文庫本の値段感覚なのか?
文章は二段構成で200頁程だが、それでも少々高い値段設定だったのだろうか?
にしても、他の銀背と比べるとこの本だけ5mm程背が低いのはなぜ?