インファナル・アフェア

2012年10月23日 火曜日

トニー・レオンアンディ・ラウ共演の2002年の映画「インファナル・アフェア(無間道)」。

10年もマフィアに潜入捜査しているトニー・レオンと、逆に警察に潜入しマフィアの為に働くアンディ・ラウの二人の主役の攻防と、警察とマフィアの抗争を描く。

所謂香港ノワールの哀しい男の物語。雰囲気は良いし、どちらが気付くかで持って行く展開は良いのだけれど、本来描かれなければならない部分が描かれず、非常に中途半端な出来になってしまっている。マフィア側は非情なはずなんだけれど前半はその描写が無く、ただのコソ泥一味、弱小犯罪団を追っている感じで、10年も潜入捜査している意味が全然見えて来ない。マフィアのボスは走ったら、コチョコチョ細かく動き笑ってしまい、全然大物感が無いし。
主役の二人はそれぞれ、潜入が長く新たな生活を手に入れているのに、何故そこまで警察・マフィア側で協力し続けるのかの理由が描かれず、全然二人に身が入って行かない。その重要な部分が無いので、単に設定通りに人物が動いているだけにしか見えて来ない。
それに途中にお互いの女性関係、恋愛話も出て来るけれど、急にそれだけ物凄く取って付けた感があり、それから何かに発展したり、それが原因での葛藤や戸惑いも無いし、何がしたかったのだろうか?男臭過ぎるからの女性を入れ込んだのだろうか?
オチも、第三の男の出現で、トニー・レオンとアンディ・ラウが全然気付いてもいない単なる間抜けに落ちてしまっただけじゃない。

それにこの映画、至って真面目に作っているのに演出部分で非常にしょっぱい感じがあり、笑ってしまう。
初っ端から、行き成り面接で「10分前、ここにファイルは幾つあった?」と聞かれ正確に答えたり、靴下が左右違うから慌て者と性格を判断するとか、最早シャーロック・ホームズ的出来過ぎな、やり過ぎな人物で苦笑。それから若い二人が行き成り40過ぎのトニー・レオンとアンディ・ラウに変身したら、そりゃあ笑ってしまう。
マフィア側の手下は全然強面でもない若者ばかりで、その中に一人渋過ぎでカッコ良過ぎなトニー・レオンがいるので浮きまくっているし。
マフィアの取引場所に乗り込む時も、警察の部隊は防弾マスクや防弾チョッキも無しに、リボルバーの拳銃一丁で押し入ろうとしているし。
誰にも気付かれずに映画館で会うからって、マフィアのボスが席に付くと後ろの列の椅子の下からアンディ・ラウがヌッと出て来る。じゃあ映画始まってからずっとしゃがんで隠れていたという事?ボスと二人で会っている所は普通に席に座っているから気付かれる可能性が高くなっているじゃん。ここ馬鹿みたいな演出。あと、警視とトニー・レオンが直接会うのは絶対バレちゃあいけないのに、他のビルから思いっ切り丸見えなビルの屋上で会っているし。どちらも気を付けて会っている風だけれど目立ち過ぎで、何年も密会に気付かない方が不思議。
また最後でも、見通しの良い周りに何も無い屋上なのに、突然瞬間移動の様にアンディ・ラウの背後にトニー・レオンが現れたり。演出や物語の展開を見せる為だけに、結構無理矢理な場面が多い。
あと、音楽の使い方が日本のドラマみたいな如何にもな分かり易い演出、主張し過ぎでうるさく感じる演出で、しょっぱさがある。最後の歌も、トニー・レオンとアンディ・ラウのデュエットで爆笑してしまった。このダサさが香港映画か。

ちょっと感心したのは、秘密の誰にも聞かれたくない電話をかけている時映しているのは、後ろ向きの姿だったり、壁に向かっての後ろ姿だったりした事。顔のアップで話している相手との切り替えが普通なのに、わざわざこんな演出付けるのはおもしろい。

この映画、どちらにもどちらのスパイが潜入しているという設定や、香港ノワールのハードボイルド的雰囲気は結構良いのに、脚本は緩くて描き切れていないし、演出は何じゃそりゃ感のモノが行き成り出て来たり、折角の物語を活かし切れず全体の完成度としては低い。それでもトニー・レオンとアンディ・ラウのカッコ良さと演技力で何とか持っている感じの映画。

☆☆★★★
 
 
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