マレーナ

2012年09月07日 金曜日

ジュゼッペ・トルナトーレ監督、モニカ・ベルッチ出演のイタリア映画「マレーナ(Malèna)」。

町中の男が振り向くモニカ・ベルッチに惚れてしまった少年は、彼女をつけ回して彼女の生活を覗き見る。

始まりは主人公が自転車を買ってもらう所からで、場所はイタリアなのだから映画「自転車泥棒」を思い浮かべてしまうけれど当然全然違うお話。それ以降は少年の淡い恋の出来事かと思いきや、思春期の少年の下ネタの性衝動の行動で、若い子が見れば共感出来るのかは分からないが、「10代なんて美しい訳が無い。」と思っている人や、若さは恥ずかしいとしか思わない人にとっては、この行動と妄想の恥ずかしに何ら面白味は感じないはず。やたらと少年の性の下ネタと、下らない妄想で押すので、ジュゼッペ・トルナトーレが監督だからと「ニュー・シネマ・パラダイス」的なモノを期待すると面食らうし、落胆は半端無い。
この映画、始まりは少年の変態的、犯罪者的恋の話だったのに、中盤辺りからか、何時の間にかモニカ・ベルッチの人生を少年を語り部として通して見、しかし徐々に少年の存在感は薄れ、もはやその少年すら必要の無いモニカ・ベルッチの話になってしまって終り、結局の所少年の日の思い出と、女性の生きる難しさや残酷さ、どちらにも焦点を当てようとして、美味しい所を一挙両得しようとした為にぶれ、どっちつかずのまま終わってしまう。と言うか、見終わると全然少年いらんじゃんと思わせてしまう。

全ての人物の描き方が極端過ぎるのも気になる所。若い男性は、主人公の少年を含め、皆性的欲望に駆られ下品な話しかしない。女性はヒステリックで嫉妬深く恥知らず。少年は無垢の様に描かれているけれど、下着泥棒するは、モニカ・ベルッチをつけ回し、人の家を毎日覗いて生活を監視していて、子供の時の淡い思い出ではなく、完全に一線を越えてしまったやばい子。この子の父親はすぐ殴り、しかもまだ小学生か中学生位なのに娼館に連れて行くしで、この父親だからの息子なのか。それにモニカ・ベルッチのリンチまでの不満の鬱積の描きが足りないので唐突な上に、それに対して誰も何も反応しない不自然さや、他の展開でもそうだけれど、取り上げたい事をそこだけ取り上げ強調し過ぎなので、不自然さに違和感ばかり感じる。

良いのは町の雰囲気だけれど、町の人の台詞や動きの見せ方はそこだけ切り取った様な説明的な場面ばかりだし、途中途中の少年の妄想は急にコメディになり、それが大しておもしろくなく、そこだけ雰囲気が違い、ちぐはぐな感じ。

モニカ・ベルッチの出世作らしいが、これのモニカ・ベルッチはそんなに綺麗じゃあない。
少年役のジュゼッペ・スルファーロはまだ子供なのにおっさんみたいな濃い顔で、凄く違和感。でもこの役ようやったなぁ。大人に「綺麗な人とキスできるから、これやって!ね。」と説得されたのだろうか。

この映画は淡くない戦争の下の少年の思い出の話。少年の成長を人の良さを描いた「ニュー・シネマ・パラダイス」のカウンターとして作った様な感じ。結局少年もモニカ・ベルッチも自業自得の様な感じは強く、人々の醜悪さを描くには物足りなく、淡くも無く、良い話でも無く、人の裏を描くには、やばい少年の目を通しているので訳が分かり難く、何だか全部中途半端な上に、物語としておもしろくないので、どうにも…な映画。

☆★★★★

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