コクーン

2012年08月13日 月曜日

ロン・ハワード監督の映画「コクーン(Cocoon)」。

老人ホームの隣の家の異星人の貝殻を保管したプールでおじいちゃん達が泳いだら元気になるというお話。

このじいちゃん達は、洒落ているし、可愛らしい。変化以前の落ち込みと無為感の対比でもあるけれど、着ている物はお洒落だし、元気はつらつ感は楽しい。
肉体的に若返ると言うよりは、若くなったら女性に行くのだから、元から精神は若い。それよりも、そんなおじいちゃん達に付き合う普通なおばあちゃん達の方が若過ぎて凄いし、ちょっと怖い。

しかし、この異星人がどうにもしょっぱい。地球人の皮を脱ぐと、安っぽい特殊メイクの全身白塗りの上、光ってる異星人に失笑。中空に浮かび、飛んでるし。それに、アトランティスという明らかな作り話を持ち出さすから、何らかの陰謀があると思ったら無いしで、何でわざわざ嘘を付いたのか分からない。一万年位してから仲間を助けに来るなんて、それまで何してたのな遅さだし、地球人に成りすました上に、アメリカの社会制度を良く知っているし、冗談も言うのに、死の哀しみが分からないなんて都合の良い設定で、何だこいつらな異星人。何よりあれが、脱出避難の為の装置?で、見た目は殻で、題名にもなっているコクーン、繭ですらないし。

それに脚本や演出がどうももっちゃりしている。人の老いを描くにしても、苦悩や葛藤はあっさりっし過ぎだし、若返ってからも若返った感が弱いし。ブレイクダンスを始めた時は「あ~あ…」。
それと、どうもニューエイジ臭さがあるのがいまいち過ぎる。初めから、そして劇中に特に意味も無く頻繁にイルカを出したり、非常に無垢で親愛なる隣人の異星人だったり。それにアトランティスの大地震で繭化した仲間を助けに来たとか、彼らによって人間から抜け出すなんて、完全ニューエイジだし。

この映画を見ていて思ったのは、異星人が地球に来てその後の行動は地球人の反応と反対になる事が多いという事。この映画の様に友好的だと、まず地球人は拒否を示すが、仲良くなる。逆に侵略目的だと、初めは疑い、友好的態度を示すも攻撃され戦争に。

設定はそれなりにおもしろいのに、展開がのっぺりしていて少々退屈だし、何より人間性を否定してめでたしめでたしな話に「何じゃそりゃ…」。そもそも何で若返るかさえ言わないし、異星に行ければ延々生きられるなんて、何てファンタジー。歳を取れば思慮深く、多くを理解した大人になるべきという道を示す訳でなく、歳を取れば自分勝手で傍若無人、見苦しくなるという事を皮肉的に描いているとしか思えなくなってしまう。結局、老いは駄目な物、悪で、若さや生き続ける事が素晴らしいなんて、古代の王様かよって話。
SFとしては非常に微妙。老いや生死を扱った映画としては、それ以上に微妙な映画。

☆★★★★

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