パッチ・アダムス

2012年05月06日 日曜日

実際にいるパッチ・アダムスという無料診療をしたり、ホスピタルクラウンを始めた医者の話を基に脚色した映画「パッチ・アダムス(Patch Adams)」。

自殺未遂で入った精神病院で患者達との交流を通じ、人の心を開ける才能に気付き、医者を目指そうとする。
始めは大人しい、鬱の様な、何時もと違うロビン・ウィリアムズなので、どうなるんだと引きがあるのだけれど、早い段階で子供の様にはしゃぎ出し、何時ものコメディアンのロビン・ウィリアムズになってしまうのでありゃりゃと引き始める。そして内容も、人懐っこく人当たりが良過ぎ、冗談ばかり言いまくって人に気に入られるという、何処かで見た様なロビン・ウィリアムズでげっそりして来る。陽気な人物ならまだしも、ロビン・ウィリアムズが演じると、思ったら我慢が効かず、常に躁状態の、周りにいるとただうっとおしい人間になってしまい、一人だけファンタジーの登場人物に。
しかもこの映画、実際とは結構違い大分フィクションが強い様。実際のパッチ・アダムスは、若い時に自殺未遂を起こし、その後高校を卒業、大学で医学の博士号を取り、在学中に友人の男性が殺されていて、無料診療の為の資金を稼ぐ為に別で働いたり、寄付を集めたりしている。また実際には在学中に出会った女性と結婚し、その女性とはこの映画が作られた年の1998年に離婚している。殺されたのを男性から女性、しかも本来なら彼の妻になった人を、離婚した年に出来た映画で殺させるというのは、明らかに制作者側の意図があり過ぎ。
演出も感動させようとするあざとさが前に出過ぎ。一番は音楽の使い方。感動を必要以上に盛り上げようとして、感動が欲しい場面では感動する様な音楽を大きく流し、まあ白ける。
それ以外にも描写を飛ばし過ぎ。何が彼を自殺へと導いたのかとか、勉強する場面が一切無いのに成績トップだったり、彼女の死からの立ち直りもあっさりし過ぎだし、精神障害を抱えた人に対しては投げっ放しで特に補足も無いし。

役者も、おっさんのロビン・ウィリアムズが学生と言うのもどうかと思うけれど、フィリップ・シーモア・ホフマンが全然大学生に見えない。ただでさえ老け顔なのに、若者として出て来たから笑ってしまった。
医学の教授の役者のボブ・ガントンをどっかで見た事あるなと思ったら、「24」のシーズン7でテイラー大統領の首席補佐官をしていたからか。

この映画で一番の見所と言うか、聴き所と言うか、一番驚いたのはエンドテロップで流れたロッド・スチュワートの「Faith of the Heart」。これって「スタートレック:エンタープライズ」のオープニングの歌じゃないか。「エンタープライズ」は真面に見ていなくて、オープニングの歌なんかさっぱり忘れていたけれど、たまたまCS放送無料の日で「エンタープライズ」を見ていた後にこの映画見て、同じ歌がかかったので「うお~!」と驚いた。「エンタープライズ」ではラッセル・ワトソンがカバーした曲だけれど、何でこの曲が選ばれ、何で別人が歌った方の曲なんだろう?

感動するコメディは良いのだけれど、ロビン・ウィリアムズの感動するコメディって駄目だ。子供みたいに純真過ぎる人の良い大人のあざとさ、楽しい事をしてますよと押し付けがましい笑かし感があざとく感じられて、見てられない。これも感動と、ロビン・ウィリアムズのコメディの押し売りでさっぱり…。実際のパッチ・アダムスと比べるとこの映画は、ロビン・ウィリアムズが前に出過ぎていて、ロビン・ウィリアムズのハートフル・ファンタジー・コメディでしかない様に思える。実際のパッチ・アダムスの雰囲気を感じるだけの映画かもしれない。この映画よりも普通に実際のパッチ・アダムスのドキュメンタリーを見てみたくなってしまう。

☆★★★★

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