マイティ・ハート/愛と絆

2012年04月24日 火曜日

実際に2002年にパキスタンで誘拐されたアメリカ人ジャーナリスト、ダニエル・パールの妻マリアンヌ・パールの手記「マイティ・ハート」を映画化した「マイティ・ハート/愛と絆(A Mighty Heart)」。

記者の夫が取材に行くと言ったまま帰って来ず、彼を探し出そうとする残された妻。地元警察からアメリカ領事館、記者達やパキスタン政府、アメリカ政府まで、彼を取り巻いていた全ての繋がりが大きい事が分かり、彼の捜査が広がって行く。ここの情報提供者を徐々に辿りながら、どういう経緯で接触しようとしたのか、彼の足取りを追って行くのは、人を探しても探しても何にも辿り着かず、何を追っても彼の消息が一向に見えて来ず、ジリジリとただ時間が過ぎる心地悪い焦燥感と緊迫感を非常に上手く見せている
。映像的にも手持ちカメラで撮りドキュメンタリー風で、早く、細かくカットを割り、繋いでいるのも緊迫感を醸し出している。結局この事件は何だったのか、良く分からない事実を見せて、変にエンターテイメントの方向に走らないのは良い。ただ話は、このどうしようもないモヤモヤ感ばかりで、終始重く、辛い。これが事実で、実際の世界だと知ると尚更。その分、映画としては良いのだけれど。

アンジェリーナ・ジョリーは痩せ、いつもとは別人で、普通な人感が出ている。演技的にも抑えた感じで演技派に行こうとしてるのが分かる。でも、アンジェリーナ・ジョリーの見せ場である泣き叫ぶ場面は急にいまいちな演技だった。
アンジェリーナ・ジョリーが妊娠しているので動きが取れず、主役のアンジェリーナ・ジョリーがそれ程前面に押し出て来る訳でも無く、その周りの捜査関係者に焦点が当たり、人物が立って行くのも上手い所。

アンジェリーナ・ジョリーが出ているからエンターテイメント性の高い映画を期待すると、全く違う方向性なので取っ付き難いはず。しかし、その抑えているけれど見せる演出や編集で飽きる事無く、集中して見入る。内容的には、個人が大きな混沌の中で喘いでもどうしようもないし、国や集団もまとめ方が下手くそだと、不幸の連鎖しか生まない、この恐ろしい無常観は、実話だからこそそのままを見せようとする気概がこの映画の出来を上げている。淡々とした事実を見せ、非常に上手く出来た映画。

☆☆☆☆★

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