レッスン!

2011年11月08日 火曜日

話的には「駄目学校のその中でも落ちこぼれ生徒を社交ダンスで変えて行く」というベタな展開の映画「レッスン!(Take the Lead)」なのだが、小気味良い音楽と編集、そして極端な対比で飽きもダレもさせずに見せ切る。社交ダンスの教師という上品で豪奢なアントニオ・バンデラスと、だらしが無い不良高校生との対比。特に極端な貧富の差から抜け出せそうもないその中で、踊る事が若者の心持を上げて行く様子を描いている。このストリート系のダンスと社交ダンス、それに合わせるヒップホップ系の音楽と古典ムード音楽の対比があるけれど、やがてその二つが合わさり、心もその音楽の様に合わさって行くという演出は上手い。演出的にもまるでPVの様な早く流れる様な映像と音楽の使い方で、あっと言う間の二時間。
クラスの面々は誰もが個性が強く、ダンスや教師に対する反応が一々良過ぎるのはいかにもアメリカン。だから話が成り立っているのだけれど。この生徒達の恋愛や確執等、学園モノの嫌いなお決まりパターンはやはりあるのだが、嫌う理由が麻薬絡みの兄弟の死という半端無い理由からだったりとぬるくないので気が折れずに見ていられる。他にも犯罪、売春、人種問題等を盛り込んで、それがすっきりとした解決を見せはしないが、意欲的な青春映画になっている。
この映画で一番良いのはアントニオ・バンデラス。真っ直ぐに熱く真剣で、へこたれない良い人でかっこ良過ぎる。当然自身も踊るけれど、様になり過ぎていてセクシー過ぎる。役にすっぽりはまっている。
なかなか楽しく良い映画なのだけれど、気になるのは踊り。社交ダンスも、それ以外の生徒達の踊りも詳しい事は良く分からないけれど、初めから踊りを踊れていたり、練習もそれ程なのに上手くなるのが早過ぎで興ざめする。特に生徒達が初めからプロ並みに自由に踊っていたり、社交ダンスが凄過ぎなのを見ると出来過ぎのファンタジー感を強く感じてしまう。また、最後のやはりな盛り上がりの踊りで終わって行くのが嫌いで一気に引いてしまった。バンデラスの笑顔で終わっていれば楽しいままだったのに。

これ、実話を基にした映画で、エンドテロップで現在もその社交ダンスの授業が行われているって出て、なかなか気持ちの良い映画だと思っていたら、実際は高校ではなく小学校での話だそうで、それだと全然評価が変わって来る。犯罪にまみれ、大人に成りかけの青い感じで成り立っているのに、結局が出来過ぎたファンタジー映画じゃないか。大分白けてしまったけれど、爽快で気持ちの良いアントニオ・バンデラスを見れるし、青春映画としてはそれなりにおもしろい映画じゃなかろうか。

☆☆☆★★

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